小樽市を形成する地域の”土木建築遺産”の石造倉庫が、また一つ消える。
臨港線沿いの回転寿司「和楽」に隣接する株式会社スハラ食品(札幌・村山圭一代表取締役)の石造倉庫の解体工事が、5月14日(金)から目下進行中だ。
小樽市では、明治20年代から港が栄え始め、荷物が次々に運ばれ、41棟の木骨石造倉庫が建てられた。1909(明治42)年になると、これが146棟になった。 1950(昭和25)年の小樽市教育委員会の調査では、明治に建てられた木骨石造倉庫は167棟だった。
明治30年代は、全国的に石造倉庫が流行しており、各地で建てられていたが、本州や九州では地震などで倒壊した。小樽では、大きな地震がなく、多くの石造倉庫が残った。
石造倉庫は、小樽の街並みを形成しており、歴史を映した貴重なものだが、道道臨港線建設のため、昭和40年代には有幌町の倉庫群が次々に解体された。この後も小規模な建て替えが行われ、石造倉庫は見る見るうちに少なくなった。
株式会社帝国データバンク札幌支店情報部の2009(平成21)年の調査では、1989(平成元)年に、市内に建っていた176件の倉庫が、20年で57件も消滅し、119件に減少したことが分かった。関連記事
株式会社スハラ食品所有の石造倉庫は、小樽港が栄え始めた1892(明治25)年建築。埋め立て前の海岸線沿いに造られた由緒ある石造倉庫として知られている。現在は、臨港線と堺町通りの間に2棟(1棟400平米)が並んで建っている。これまで倉庫として使われていたが、7年前から全く利用されておらず、同社は、臨港線側の1棟の解体工事を、5月14日(金)から始めた。
「倉庫利用について、色々な提案はあったが、どれも採算ベースに合うものはなく、イニシャルコスト(初期費用)がかかり過ぎる。老朽化しているので、維持するにはコストもかかるため、解体することにした。本当は、2棟解体しようと思ったが、小樽の街の景観の問題もあり、もう1棟は何かに活かしたいと思う」としている。
景観問題に取り組む関係者は、「小樽の石造倉庫は、個人の方の善意で保っている。老朽化でしょうがないとか、維持するにはそろそろ限界など、個人のしょうがないを繰り返すと、10年先には、石造倉庫は無くなってしまい、もっと街並みが変わってしまう」と危機感を募らせている。