小樽在住の作家にスポットを当てる市立小樽美術館(色内1)の特別展「小樽 美術家の現在シリーズⅢ 堀忠夫・羽山雅愉展」が、5月15日(土)から同館2階展示室で開かれる。
同シリーズは、小樽在住でキャリアがあり、全国的に作品の水準が高い美術家を紹介する。現在10人をリストアップしており、すでに2006(平成18)年度、2007(平成19)年度に4人の展覧会を開いた。
2年ぶりの開催となる今回は、北海道教育大学で美術を専攻し、卒業後、中学校の美術教師の傍ら、数々の受賞とともに独特の画法を築きあげてきたという共通点のある堀忠夫(74)と羽山雅愉(本名・準一・66)の2人をクローズアップ。
堀忠夫は、美術教師として、秩父別、栗沢、札幌を経て、小樽に赴任した。大学在学中には、全道展、道展にそれぞれ初入選を飾り、道展会員となり、現在まで連続出品を続けている。小樽では、小樽市美術展(市展)委員長として、美術活動の発展に尽力した。
保健室や病院の薬品棚、水産試験場の標本棚、骨格標本、商店のウインドウなどを綿密に描いた作品が、公募展で注目を集めた。「棚」シリーズと呼ばれた作品は、綿密描写の先駆と評価を受けた。「具象絵画の新たな視点を感じさせるものでした」(同館)。
1977年のヨーロッパ取材を契機に、海外の歴史的遺跡に心を奪われ、現在に至るまで、ギリシャや北アメリカ、南米、中国などの文化遺産の連作に移った。 1980年代には、スケッチブックを片手に奈良京都を旅し、古い民家や倉庫、小樽の歴史的な建造物を探索し、重厚な壁や窓をモチーフに選んだ。建物の窓や扉などの部分を拡大して描く構図法と、持ち味である綿密描写で対象物の質感を克明に表現している。
「小樽からはじまり、世界の文化遺産を取材し、背後にある人間の歴史、生活空間を一貫したテーマとして描いてきた堀忠夫の画業を、代表作を選りすぐりご紹介する」。
羽山雅愉は、釧路生まれ、美術教師となって小樽に赴任した。1970年代から北海道教職美術展特選、全道展知事賞など各賞を受賞し、会友、会員へと順調に評価を高めた。
代表作として定着した「黄昏」シリーズは、出身地釧路と長年住んでいる小樽の2つにモチーフを集約。現場から選び取った部分を組み建て直し、街全体が発光しているかのような、独特の幻想世界に変貌させる。
「街を形成する建物や運河に幾何学的な形態を象り、細かな線の集積で繊細な部分と全体を対比させたりと、創意工夫が凝らされています。本展は、『黄昏』を中心に羽山の画業を振り返り、その光に包まれた街を展覧します」。
同展では、2人の43作品を展示する。「2人の作家の表現技法の違いを見てもらいたい」(星田七重学芸員)。
「小樽 美術家の現在シリーズⅢ 堀忠夫・羽山雅愉展」は、5月15日(土)から7月11日(日)まで。観覧料:一般400円、高校生・70歳以上の市内在住者200円、中学生以下・障がい者無料。
5月29日(土)に羽山雅愉、6月26日(土)に堀忠夫のギャラリートークが企画されている。いずれも13:30~14:30。観覧料が必要。作家本人から、作品に込めた思いなどが語られる。
問合せ:0134-34-0035