小樽市病院局(並木昭義局長)による「病院問題についての懇談会」が、9月4日(金)18:30~20:00、量徳小学校体育館(若松1)で開かれた。
約50人の市民が集まり、並木昭義局長の「新病院の展望と建設地についての見解」、7月2日の「小樽市立小中学校 学校規模・学校配置適正化基本計画(素案)」地域説明会で出された質問や意見に対する回答に耳を傾けた。
並木局長は、「4月に就任して以来、小樽市内はもとより、札幌手稲、後志管内(余市、倶知安、岩内、寿都、黒松内)の医療関係者、そして北海道大学、札幌医科大学の各診療科の教授を廻って意見を聞いた。小樽市では、二次医療をきちんと対応して欲しいこと。三次医療は札幌と連携し役割分担をする必要があること。特に市立病院には、専門的、高度の医療のできる体制をしっかり作って欲しいこと。新病院開設の時期、場所、規模などあり方について早急な再検討が必要であることなどの意見が寄せられた。
特に医療関係者からは、新病院の建設地は、現在地周辺が望ましいとのことであった。協会病院が近接してあり病院連携で有利。オープン病床を利用する開業医の利便性が良い。市内外の医師は現在地付近での建替えを望んでいる。
両市立病院の統合新築は緊急の課題である。豪華な病院は必要でなく、地域の実情に見合った規模で、効率的で質の高いかつ市民から親しまれる病院が必要である。医療センター(第二病院)の機能は、統合して総合的診療ができる状況下で今以上に発揮される。早急に新病院のビジョンを打ち出す必要がある。そうしなければ、医師、看護師などのやる気もなくなり、私も医師を自信を持って集め、迎えることができず、病院の存続が危ぶまれる。
6月に、以上のような実情を含めて、新病院の建設地としては、量徳小学校と現病院敷地の方が望ましいという私の見解を市長に伝えた。マスコミ等で提言となっているが、正式な文書にして提出したものではなく、市長が現在の医療状況の変化を正確に把握し、適切に判断できることを期待して意見を述べたものである。
新病院の役割として4本の柱を挙げている。①脳疾患②心疾患③がん診療④他の病院にない診療科の診療。二次の救急医療は、脳外科、心臓血管外科さらに精神科のある市立病院が中心となる。急性期医療、特に重症患者の集中治療は麻酔科医の揃っている市立病院が中心となる。がん診療は、放射線治療を小樽・後志地区で唯一実施しており、地域がん診療連携拠点病院を目指している。学校も病院も市民の共有する財産であり、その存在及び活動の意義は極めて重要だ。小樽市の将来を見据えて全体として考えることが是非必要である」と述べた。
病院局経営管理部の吉川勝久部長は、前回の説明で寄せられた質問に対しての回答を述べた。「量徳小学校の場所が病院敷地に適している理由は」に対しては、「正方形の病院建設が可能であり、シンプル、コンパクトな病院建設ができ、かつ効率的な医療ができる。市有地であり土地取得費がかからない。築港地区などの民有地を買うとすると数億円が必要。交通の便が良い。市民からは現在地での建替えを望む声が多い」と話した。
また、「新築すれば医師は来るのか」の質問に対して、「病院局長自身が22年間大学の教授を務めてきた経験と4月から各大学の教授と面談した結果、小樽は札幌からの通勤圏内にあり、医師にとって魅力のある勤務地、市立病院の動向が見えない中で敬遠されてきた、市立病院の将来ビジョンが見えれば希望する医師は少なくない」とした。
この後の質疑応答では、量徳小卒の女性が、「市長は、2年前に、築港に建てると断言し、絶対建てますと約束した。市長が出て来て、頭を下げて謝るべきではないのか。並木先生が来なければ、病院問題はずるずると過ぎていったと思う。この2年間、市は何をやってきたのか」と強い口調で質した。
これに対し、山﨑範夫総務部長は、「今日のことは市長に伝える。2年前の選挙では、病院問題が大きな争点となり、立候補者3人とも違う意見だった。財政的な問題で、基本設計を中断してしまったので、お金を借りれるために、病院改革プランなどを作ったりしている。何もしていなかった訳ではない。今回の説明会のことも市長に伝え、またこの場を設けて、市長から話をしてもらうようにする」と答えた。
PTAの一人は、「並木先生が、量徳小学校の敷地がOKならすぐに進めたいとおっしゃっていたので、今日の説明会を聞いていると、すでに病院計画が現在地で周辺で建てるという風に決まっていたのかと思ってしまう」と質問。
並木局長は、「医療者の立場として、ここが良いと、市長に意見を述べた」。市教育委員会は、「我々が方針を変えたということではない。あくまでも市内全部の学校の適正配置の計画の中で、量徳小学校が含まれている」と述べた。
今回の「病院問題についての懇談会」で明らかになったのは、市の行政の一貫性のなさと、市長のリーダーシップの欠如だ。市長は、選挙公約で、築港地区に豪華病院を建設することを掲げていたが、すでに中断に追い込まれてから、新病院問題で為す術もなく、2年近くも経過した。
市は、建設中断に追い込まれ、2007(平成19)年11月に出した「新病院建設に対する方針」で、新病院建設用地の購入は、2008(平成20)年度に変更し、併せて基本設計についても2007(平成19)年度の委託業務を一時中断して、2008(平成20)年度の用地購入に係る起債申請の時期を見極めて再開することとし、病院の統合新築を進めていくこととした。
しかし、すでに2008(平成20)年度は過ぎ去り、2009(平成21)年度の夏を過ぎても、再開される気配は全くない。
2009(平成21)年度4月からは、病院局を新設し、病院局長に運営を丸投げしている。この中で、並木病院局長が、現在地と量徳小の敷地を合わせた場所が、新病院の建設地として望ましいと6月に市長に”提言”していた。
今回、この局長見解が、市民の前で述べられた意味は、大きいものがある。市長は、いまだに「築港地区での統合新築を進める」立場を再三表明している。市議会も同じ立場で推移している。
市と市議会が、築港地区での新築の立場なのに、病院の全責任者の並木局長が、このことを十分、分かっていながらも、築港地区での「豪華な病院は必要でなく、地域の実情に見合った規模で、効率的で質の高いかつ市民から親しまれる病院が必要」で、「新病院の建設地としては、量徳小学校と現病院敷地の方が望ましい」と述べたことは、極めて注目される。
病院局長の見解を受けたのか、これまで、築港地区での建設にまい進し、「築港地区で早急に建設する必要がある」としてきた病院事務局までもが、現在地と量徳小周辺での新病院建設は、「シンプル、コンパクトな病院建設ができ、市有地であり土地取得費がかからない。築港地区などの民有地を買うとすると数億円が必要。交通の便が良い。市民からは現在地での建替えを望む声が多い」とまで回答するまでに至ったことを聞くと、市民は唖然とする他はない。参加者からも、「市長は、2年前に、築港に建てると断言し、絶対建てますと約束した。市長が出て来て、頭を下げて謝るべきではないのか」と強い批判の声が上がったのもうなずけるところだ。
市と市議会は、築港地区での豪華病院。病院局は、現在地で地域の実情に見合った規模の病院と、それぞれが勝手に主張する行政の一貫性を欠く発言では、市民は困惑を増すばかりだ。これは、市長や市議会のリーダーシップの欠如を露呈しているもので、行政が二元化していることを示している。新病院建設で、市長や市議会が、今後、行政の一元化に向けて、どのように対処するかが、大きく問われることになる。9月市議会は、15日(火)から開会される。
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