9月3日(木)10:00から、札幌地方裁判所で小樽市長を被告とする損害賠償履行請求事件の第6回口頭弁論が開かれた。
この日、原告からは、第2準備書面が提出され、新病院の起債許可をめぐる市と道との事前協議書が明らかになった。
原告の公文書公開によるこの事前協議書からは、起債許可をめぐり、あせる小樽市と渋る道庁とのせめぎ合いが露呈した。
小樽市(山田勝麿市長)が、選挙公約として推し進めていた市内築港地区での豪華市立病院建設計画で、基本設計を中断し、2,581万円の解約料を設計会社に支払ったのは違法・不当であり、市に返済を求める住民訴訟を起こしているのは、市内稲穂の松浦光紀さん(63)。
すでに、5回の口頭弁論が開かれ、被告・原告とも準備書面でのやりとりで、それぞれの主張を展開していた。
3日(木)の第6回口頭弁論では、原告が、情報公開法に基づき、市に公文書開示請求をして得られた開示文書を基に主張を展開した。
原告第2準備書面は、「今回の訴訟の争点は、第3回口頭弁論(4月16日)で、裁判所が指摘した、果たして基本設計の発注の必要性があったのか。また、解約料の支払額の妥当性があったのかにある。の2点に尽きます。さらに、被告が主張する起債のための道との協議で、基本設計が必要だったのかが問われています」として、開示文書を基に反証した。
開示文書は、一部黒塗りがされているものの、新病院建設の起債をめぐる市と道との事前協議が、2006(平成18)年4月から2007(平成19)年11月までには、9回行われたことを示している。
原告は、これを基に、基本設計の発注の必要性があったのかについて、基本設計の発注に至るまでと基本設計の中断に至るまでの2つの時期に分けて論証している。
小樽市が進めていた新病院建設では、基本設計を発注する1年前の平成18年4月の道との打ち合わせで、道からは、「病院事業で総務省が聞くことは、①事業の必要性②事業規模が適正かという点」とし、「①は、小樽市の場合、札幌と近いことから他都市とは状況が違う。病院を新築して市が経営していく必要があるのか」と指摘されていた。
さらに、「44億円の長期借入は、不良債務とは扱わないこととして協議してきたが、H18地方債同意等基準からは実質的な赤字とみなされ、起債の申請にあたって、小樽市は許可対象の団体となる(判断基準を不良債務比率から実質赤字比率に変更し、起債をこれまで以上に厳しく制限するということだ)。許可団体の場合は、新たに起債申請する時点で健全化計画を作成する必要がある」と指摘されていたことも明らかになった。
これに応じ、市は、2006(平成18)年5月に、公営企業経営健全化計画を提出したが、市立病院の収益・患者数の激減で、新たな計画を出さざるを得なくなり、同11月に再提出、さらに、3月に再々提出をした。市のこのコロコロ変わる健全化計画に、道は強い不信感を抱き、国に申請するに至らなかった経過が、同文書から伺える。
結局、市は、用地取得と実施設計の起債許可が見込めないことから、築港地区での新病院建設計画と基本設計の中断に追い込まれることになった。この経過が、原告・松浦さんが、市から取り寄せた開示文書から明らかになった。
開示文書を基にした原告の主張は、3日(木)の法廷に提出された第2準備書面に詳しく述べられている。また、黒塗りされた市の開示文書も興味深い。
次回の口頭弁論は、11月12日(木)10:00から、札幌地方裁判所701号法廷で開かれ、原告の第2準備書面に対する被告の反論が提出される予定。
◎原告第2準備書面
◎開示文書(報告書)