裁かれる密室犯罪 介護ヘルパーの窃盗事件


 市内花園5丁目にある札幌地方裁判所小樽支部の仮設プレハブ法廷で、3月6日(金)13:30から、ある窃盗事件の初公判が行われた。
 小樽市は、高齢化が急速に進み、人口の3人に1人が65歳以上という少子高齢化型の都市になっている。高齢人口が増えるに従い、介護が必要な老人たちが増えている。
 今回の窃盗事件は、この老人を助ける訪問介護・家事ヘルパーによる密室での犯罪で、ヘルパー派遣を頼む人たちに、警鐘を鳴らすものとなっている。
 事件の概要は、市内にある介護ステーションから派遣されたヘルパーの女性(40)が、自らの借金を返済するために、2006(平成18)~2008(平成20)年にかけ、派遣先の高齢者宅2軒から、ブランドバッグや高級ネックレスなど計約318万円相当を窃取し、売却した。
 この初公判が、3月6日(金)13:30~14:00、札幌地裁小樽支部で開かれ、検察側が、事件の起訴状と追記訴状を朗読し、冒頭陳述などを行った。
 検察官が朗読した事実4件について、裁判官が被告人に間違いないかと確認すると、被告人はこの事実を認めた。弁護人は、「窃取した事実は争わないがネックレスの時価については慎重に論議したい」とした。また、他の1軒の高齢者宅には被害金を振り込んだことを報告した。
 被害にあった家族は、「94歳と90歳の老父母は、在宅介護認定を受け、介護ステーションからヘルパーの派遣をしてもらっていた。ヘルパーは、よく働き、よく気が付くことで、老父母や家族の信用を勝ち取り、家族ぐるみの付き合いにまで発展していた。毎月父母に渡している小遣いなどもあっという間になくなり、ある時は大事にしていたネックレスが無くなり探していた。家族には貸していないし、お金も無くなるので、家族は疑心暗鬼に陥った。金無垢の時計が無くなり、介護ステーションに忘れたのではないかとヘルパーが、一緒に探す状況となり、これは怪しいと警察に被害届けを出した。そして、同ヘルパーは、1月中旬に別の窃盗で逮捕されて、自白に至った。無くなったネックレスは、ハサミで切り刻まれて出てきた。
 小樽は、これだけ年寄りが多く、今回のような窃盗もレアケースではないのではないか。認知症などでヘルパーを頼まなければいけない老人宅では、ヘルパーとの関わり方が問題となる。ヘルパーの質の低下や事業所(介護ステーション)の管理責任もある。
 今回のことはたまたま他の件でやった犯罪で明らかになったが、このようなことは氷山の一角ではないのか。物やお金をとられたことより、信頼しきっていた人が、ニコニコ笑いながらこういう犯罪を犯していたことが全く信じられない。家族は、裏切られたショックで、精神的に大きく傷つけられた。よそから泥棒が入ってきたなら諦められるが、あの人に限ってと信頼しきっていたのに、心をズタズタに壊された。老老介護の密室でのヘルパーの犯罪は、やられても分からないし、確かめようもない。安易な人を派遣すると、罰が下ることを事業者も認識してもらいたい」と、市民に警鐘を鳴らしている。
 次回の公判は、4月10日に開かれ、弁護側の意見陳述などが行われる。