「第11回小樽雪あかりの路」の最終日となった2月15日(日)、市内中心街の小樽グランドホテル(稲穂1・竹内恒之社長)と同ホテルクラシック(色内1)の2館が、19年の営業を休止し閉館した。
最後の営業日の15日(日)には、グランドホテルの2階中華レストラン「桃花」と13階レストラン「ベルヴュウ」で、食材が無くなるまで「さよらなバイキング」が行われた。
11:30のオープン前には、レストラン前に市民の行列ができ、ホテル従業員は、その対応に追われた。
「桃花」では、食材が限られる中、から揚げや春巻き、エビチリなど約60種類のメニューが並び、市民たちは、小皿に料理を取り分け、最後の味を楽しんでいた。
友人4人で訪れた市内在住の主婦(50代)は、「ちょこちょこランチに訪れていたので、閉館は残念。1時間以上前から並んだので、5番目に入ることが出来た。最後にみんなで色々な種類のメニューを食べることが出来て良かった。美味しい」
積丹から訪れた4人家族は、「友人の結婚式などで来たこともあるので、無くなるのは本当に残念」と閉館を惜しんでいた。
この2会場のさよならバイキングには、1,000人を超す市民が押し寄せたが、待ち時間が最長で90分になるなど混雑したため、飲食を諦めて帰る市民も多く、結局、最後の”晩餐”にありつけたのは、325人だけだった。
系列のグランドホテルクラシックは、前日14日(土)の宿泊をもって営業を終了し、15日(日)は正面玄関に鍵を閉めて、従業員たちは残務整理を行っていた。
竹内恒之社長(74)は、「取引先やお客様、従業員を含めて、問題も起きないで、無事に今日を迎えることが出来た。取引先の関係者も、1月に閉館が決まってからも継続して応援してくれた。小樽市民の人には、2月15日に閉館することが決まってからも、FAXや手紙で激励して頂き感謝している。
従業員は、最後の最後まで誰一人欠けないで頑張ってくれて感謝している。120名のうち20名しか就職先が決定していないが、閉館後に努力したいと思っている。一人も脱落しないように、明日から残務整理をしていく。退職金を払って職員の安定を確保した上で、1ヶ月以内には法的整理をしたい。
これからは、小樽の中心街に光りを持って来ないといけない。マイカルで客が分散してしまった。新たに市民が集まれるようなものをつくっていかなければいけない。ホテルを閉めるということは、新たな再開発のためでもある」 と話した。
「桃花」で20:20頃まで行われていた稲穂町会の宴会が終ると、従業員約20人は、1階正面ロビーに一列に並び、最後の客を「ありがとうございました」 と、万感の想いで見送った。
正面玄関で最後の客をタクシーに乗せると、竹内社長が自ら正面玄関入口ドアを内側から施錠した。従業員2名が、「永年のご愛顧誠に有難う御座います。2月15日(日)をもちまして閉館いたしました」と書いた紙をガラスドアに貼り、ロビーやティーラウンジの照明を落とし、24時間営業のホテルは、真っ暗な闇に包まれた。
小樽グランドホテルが入っていた約130億円かけた大型ビルは、2005(平成17)年10月に丸井今井小樽店が撤退し、ビルの6割が空洞化していた。このホテルの閉館と、暫定営業中のサンモールネオの3月末の閉店によって、ビル全体が空洞化する。小樽の衰退を象徴するかのように、商店街の中央に巨大な”幽霊ビル”が出現することになった。
真っ暗になった小樽グランドホテルには、外の強い雪が吹き付けていた。
◎関連記事1 関連記事2