小樽市富岡の付近住民たちが自らの居住する環境を守ろうと、建物の高さ制限による地区計画を導入する運動が広がっている。
日銀行舎跡地周辺で建物の高さ制限による地区計画を進めている「日銀行舎跡地まちづくり協議会」の運動を受け、今度は、小樽税務署(富岡1)が来春に移転することに伴って、その周辺住民により、同じく建物の高さを10m以下にする地区計画を進めていることが、本社の調べで分かった。
小樽税務署は、現在、富岡1丁目の敷地2,974.83平米に建っているが、2009(平成21)年度中に新築される小樽地方合同庁舎(港町)へ移転することになっている。移転後、土地・建物所有者の財務省北海道財務局小樽出張所(港町5)は、跡地を売り払うことにしている。
このため、今後の跡地利用に危機感を持った、税務署周辺に住む主婦らが、昨年8月、すでに地区計画導入に向けて動いていた「日銀行舎跡地まちづくり協議会」の説明会に参加した。同署周辺地域は、協議会が制限する地域から除外されていることを確認。「このまま何もしないと税務署跡地にも高層建築物の建設が予想される」 ことを危惧して、周辺のまちづくりのあり方を考え始めた。この結果、協議会とは別に、同周辺に新たに地区計画を導入することにした。
北海道財務局小樽出張所を訪れ、地区計画策定についてを説明すると、「賛成も反対もせず、住民の意思に従う」 との回答を得た。このため、主婦5人が、日銀跡地の協議会や札幌で地区計画活動を行った世話人らと話し合いを持った。10月には「税務署周辺地域まちづくりの会」 を発足させ、税務署周辺の住民アンケートや説明会などを実施した。
この結果、「税務署周辺地域は、市の中心部に隣接した利便性の良い地域でありながら、2階建てが中心の低層住宅主体の落ち着いた街並みとなっている。道路を歩いても連なる山々を身近に感じ、遠くに海を望む景観を有する事から、他の地域に住む人々からも愛される街並みとなっている。この街並みが大きく変貌する事を防いで、今後も良好な住環境を維持する」 ため、建物の高さを10m以下に制限することを決めた。1月25日(日)には、計画立案に必要な税務署敷地の3倍の面積約9,000平米の地権者31人の同意を得た。
周辺住民の同意を得たことで、1月27日(火)に市都市計画課を訪れ、今年度中には、都市計画法による提案制度の提出を正式にすることを伝えた。市がこれを受理すると、妥当性などを都市計画審議会で審議し、建築基準法の改正条例案を市議会に提出することになる。改正条例案が市議会を通過すれば、小樽で初めての住民の提案による都市計画の地区計画が成立することになる。
世話人は、「長くこの地に住んでいて、高層建築物の建設を危惧して活動を始めた。住民の皆さんや市役所の方々などのご協力があって、ここまで来た」 と話している。
富岡地区は、小樽では屋敷町として知られている。現在の住環境を守るために主婦主導で自ら立ち上がり、地域住民とともに建物の高さ制限で対応することになった。
◎関連記事1 関連記事2 関連記事3 関連記事4