博物館メールマガジン113号

博物館メールマガジン113号をお届けします。
このメールマガジンは、小樽市総合博物館の最新の情報を皆さんにお届けします。
多くの方にご利用いただきたいと思っております。お知り合いにもお勧めください。

☆企画展のご案内

◆ミニ企画展「どこから来たのか?―道央のカマキリとカマキリの世界」

内容 本来道央圏に生息しないはずのカマキリ類が、小樽や札幌などで相次いで 見つかっています。小樽や余市で見つかったカマキリの標本を中心に、カマキリ出現の謎について考えます。また、当館所蔵の世界のカマキリの標本も公開します。

期間 平成21年1月18日(日)まで(運河館の休館日を除く毎日)
会場 小樽市総合博物館 運河館 第二展示室
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます)

◆企画展「お菓子と木型~和菓子職人の小道具~」

内容 小樽のお菓子屋さんが使っていた落雁の木型やもなかの皮を焼く金型、練りきりの道具など、主に和菓子作りの道具を展示します。

期間 12月20日(土)~平成21年3月29日(日)(本館の休館日を除く毎日)
会場 小樽市総合博物館 本館 企画展示室
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます)

《企画展関連行事》
◆親子でチャレンジ!和菓子作り

内容 家庭ではなかなか作れない日本伝統の和菓子つくりを和菓子職人から学びます。
日時 平成21年1月12日(月・祝) 午後2時~4時
場所 小樽市総合博物館 本館 実験室
講師 牧田浩司氏(和菓子処つくし牧田 社長)
対象 どなたでも
定員 20組(大人の方一人でも可)
料金 入館料(年間パスポートもご利用いただけます)の他に、材料費1500円
申込 電話、FAX、メールで(1月4日から)

☆行事のご案内

◆学芸員リレー講座「蒸気機関の歴史と科学」

内容 実験を交えながら、蒸気機関について紹介します。
日時 平成21年1月10日(土) 午後1時半~3時
場所 小樽市総合博物館 本館 研修室
講師 東山一成(当館主査学芸員)
対象 どなたでも
定員 40名
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます)
申込 電話、FAX、メールで(1月4日から)

◆切り絵でカレンダーを作ろう

内容 色紙を切り抜いてつくる、切り絵の入門編です。
日時 平成21年1月11日(日) 午後1時~3時
場所 小樽市総合博物館 本館 研修室
講師 高橋悦郎氏(「小樽切り絵カルタ」作者)
対象 どなたでも(小学校3年生以下は保護者同伴)
定員 25名
料金 入館料(年間パスポートもご利用いただけます)の他に、材料費200円
申込 電話、FAX、メールで(1月4日から)

◆青少年のための科学の祭典 小樽大会(冬)

内容 午前の部(午前10時~12時)指導者研修会
科学に関する実験や工作についての指導者向けの研修
午後の部(午後1時から4時) 一般公開
約15ブースで科学に関する実験や工作
日時 平成21年1月17日(土) 午前10時~午後4時
場所 小樽市総合博物館 本館 実験室、研修室、2階回廊
対象 午前の部 教育関係者や一般の方
午後の部 どなたでも。(小学3年以下は保護者同伴)
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます)
申込 直接お越しください。

◆「刈りとった羊毛で毛糸を作ろう」~第3回毛糸を紡ぐ~

内容 つむぎ車などを使い、羊毛から毛糸を紡ぐ作業を行います。
日時 平成21年1月24日(土) 午後1時半~3時半
場所 小樽市総合博物館 本館 実験室
対象 どなたでも(小学校3年生以下は保護者同伴)
定員 25名
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます)
申込 電話、FAX、メールで(1月4日から)

◆ワックスボウルを作ろう

内容 「雪あかりの路」で使われている「ワックスボウル」を作ります。
日時 平成21年1月31日(土) 午前10時半~11時半と午後2時半~3時半
場所 小樽市総合博物館 本館 実験室
対象 小学生以上(小学生3年生以下は保護者同伴)
定員 各回25名
料金 入館料(年間パスポートもご利用いただけます)の他に、材料費500円
申込 電話、FAX、メールで(1月4日から)

☆本館施設のご案内

◆デジタルプラネタリウム

内容 その日の星空について学芸員が解説します。投影時間は30分間です。
冬のおはなし「すばると三つ星」 他
日時 午後0時35分(土・日曜日、祝日のみ)、午後3時45分
場所 小樽市総合博物館 本館 1階ドームシアター
定員 先着33名
料金 入館料のみ(年間パスポートもご利用いただけます。)
※ 冬休み期間中(12月25日~1月18日)は、1日2回投影。
※ ドームシアターでは、プラネタリウムのほかに「小樽の歴史紹介番組」を上映中。

◆チャレンジラボ

内容 1月「色つきロウソク作り」
日時 土・日曜日、祝日の午後2時 から30分程度
場所 小樽市総合博物館 本館 実験室
定員 なし
料金 入館料(年間パスポートもご利用いただけます)の他に、材料費100円

☆お知らせ

◆本館が冬期料金になりました。

11月5日(水)から平成21年4月27日(月)までは、冬期入館料になります。
一般 300円 高校生・市内在住の70歳以上の方 150円 中学生以下 無料
※ 自動車展示館、屋外展示車両の内部などはご覧いただけません。
※ 蒸気機関車「アイアンホース号」は冬期間運休しています。

☆休館日

◆本館 1月の休館日 1(木)~3(土)・6(火)・13(火)・20(火)・27(火)
◆運河館 年末年始(12/29~1/3)以外は、いつでも開館しています。

☆地域史5大ニュース

今年も大詰めです。

久しぶりに雪のないクリスマス(気象庁のデータでは積雪深5cmだったそうで すが、どこにあったのでしょうか。)でしたが、一転して猛吹雪の年の瀬となりました。

このコラムも何回目かの年越しとなります。しらべてみると、餅の話題、小樽のかつての年の瀬の風景など、ふさわしいテーマをすでに書いていました。

現在、本館企画展示室では「お菓子と木型 和菓子職人の小道具」を開催してい ます。この話題については、苦労してデビュー作を仕上げた担当に譲りますので、 これも書きません。とてもきれいでお正月にふさわしい展示ですのでぜひご覧ください。

そこで、巷でやっている十大ニュースを探してみようかと思いましたが、長くな りますので、総合博物館の歴史担当がみた今年の五大ニュースを記してみます。

日本史、北海道史という大きな枠で見ると6月のアイヌ民族をわが国の先住民と 認めた国会決議が上げられますが、そういう大きな話題ではなく、手宮本館のリ ファレンスルームの回りでおきた、ささやかではありますが、小樽にとっては決して小さくない話題を取り上げます。

まずは3月の『稲垣日誌』28巻の刊行です。稲垣日誌の刊行はすでに20年近く続いていますが、今回初めて、市民ボランティアの手によって編集が行われました。

原稿の入力、校正をほぼ1年かけてしていただきました。

日誌の刊行は決して大きく新聞が扱うようなものではないのですが、明治から昭 和初期の小樽の息吹を知ることのできる貴重な資料をまた積み重ねることができました。現在、全国どこの博物館も数字におわれて、人目を惹きやすい、世間に受け入れやすい企画を取り上げるようになっています。もちろん当館でも博物館のPRという意味でそのような企画も行っていますが、博物館の基礎体力は、この日誌の刊行のような地味な調査活動があって始めてつくものです。しかも今回はそれを市民ボランティアが行ってくれました。

博物館を支える力が博物館の外に広がっていった成果です。当館では自然系のボランティアの活動、車輌修復の活動など市民による活動が根付いているという、特筆すべき伝統がありますが、それが印刷物の形で世に出すことができました。

この『稲垣日誌』の入力・編集作業は現在も29巻の3月刊行に向けて継続しています。来年度からは、いよいよ原文(くずし字)の翻刻作業も加わります。ご興味のある方は是非、一緒に大正時代の小樽の姿を探してみましょう。

次は9月に発表された、通称「軍事道路」の謎の建造物に関する調査成果です。
これもボランティアの成果で、自慢になりませんが、当館学芸員は何もしませんでした。

この建造物は以前よりさまざまな人によって紹介され、〒マークがついていることから郵便配達の避難所ではないかといわれ、中には心霊スポットのような紹介をした方もいました。今回これを調査し、電話ケーブルに関する施設であることを突き止めたグループは、以前から市内に残された「印」(ヤマサ、マルイなどの記号)をコツコツ調べてきた方たちです。銭函地区に住む方を中心に踏査だけではなく、文献調査も続けてこられ、ついにその正体を明らかに
しました。また、銭函駅近くにもこの電話ケーブルに関する遺構がのこっていることも明らかになりました。

地域の方が地域の歴史を掘り起こした、とてもよい例です。この発表の後、現地踏査の講座を行いましたが、多くの市民の方に参加していただきました。また、この成果を記録して残すべく、現在編集作業中の研究紀要に投稿していただきました。

「軍事道路」についてはその詳細はまだ明らかになっていません。小樽-札幌間
の交通路としてある一定の働きを期待されたはずなのですが、表舞台には登場せず埋もれていきました。これらを掘り起こしていく作業は、本来地域の博物館にとって課せられた使命といえます。市民によってその成果が得られたことは特筆すべきことではないでしょうか。

9月には、ある意味で全国レベルの資料が寄贈されました。

8月末から行われた特別展「ピリカ・モシリ 現代に生きるアイヌ工芸」をご覧になった市民から、高島で採集されたアイヌ文化独特の衣服が寄贈されたのです。

この資料が注目された点は、まず小樽のアイヌ文化の遺産であることが明確である点です。一般にアイヌ民具は収集家や美術商などの手を経て博物館などに収められるケースが多く、その資料の制作地や年代、作者などの情報は欠落することが多々あります。ことに小樽の資料となると現在公開されている資料としてはこの衣服が唯一のものです。小樽、後志のアイヌ文化は道北やサハリンと関係が深い、との説がありましたが、それを証明する資料がありませんでした。

寄贈された衣服の注目すべき点は、まさにその北方との関係を示唆するものであった点です。アットゥシと呼ばれるオヒョウなどの樹皮(内皮)から糸をとり織り上げるアイヌ文化独特の衣服は有名ですが、これはイラクサの繊維から糸を取った「テタラペ」とよばれるものでした。このテタラペさらに背中の文様をみると、サハリン採集の資料に極めて類似しています。

まだ調査をしっかりとしていませんので、早計に結論は出せませんが、従来言われていた説を証明する資料になるのかもしれません。

小樽市民の方にとって、小樽の歴史をもっとも身近に感じたものは1月に北海道新聞小樽支社から発行された『小樽なつかし写真帖』でしょう。

当館でも2月の講座の講師をお願いした小野民夫氏、啄木会の水口忠氏らが中心となって月に一回発行しているものの総集編でしたが、その価格の安さもあって多くの市民が手に取った本となりました。おそらく小樽の地域史に関係する本としてはベストセラーとなったのではないでしょうか。

当館所蔵の写真もたくさん掲載していただきました。またこの掲載をきっかけに当館に写真を寄贈していただくことも増えてきました。この本をみていまさらながらに感じることは、地方都市でありながら、これだけたくさんの写真を残してきた街はあまりないのではないか、ということです。

現在もこの企画は進行しています。小野氏の情熱的な収集、調査による部分が大きいのですが、新発見の写真が今後も続くことだと思います。

最後にとりあげたいのは、この『なつかし写真帖』で小野氏のグループが発見した業績です。それは10月に発表された、石川啄木の小樽時代の勤務先、小樽日報社についてです。

この企画に関する写真について相談を受けた際には「あまりありません。」とお答えしたのですが、小野氏らは当館が持っていた明治40年のパノラマ写真を精査し、そこに小樽日報社の新築社屋が写っていることを発見したのです。

従来、小樽日報の社屋写真とされてきたものは2階建ての和風建築で、けっして近代的でも豪華なものでもありません。いかにも「都落ち」の啄木のイメージを髣髴とさせるものでした。

しかし、小野氏らが発見した写真では、鮮やかなペンキ塗りの洋風の大きな建物で、啄木が新規まき直しの希望を抱いて小樽にやってきたことが思い浮かぶものです。この発見は小樽時代の啄木のイメージを大きくかえるものと言えます。

つけくわえたいことは、小野氏のグループはこの発見を発表するにあたり、当時の新聞を丹念に調査し、新築の記述さらに従来の写真に写された家屋に建て替えられた経緯を確認していた点です。しっかりとした調査の上での公表であったことは私どもとしても見習わなければならないと強く感じています。

新年は小樽にとっては未曾有の厳しい年になりそうですが、後世に小樽の歴史を伝える責務だけはなんとしても続けて行きたいと思います。みなさんの今以上の応援をお願いいたします。

(学芸員 主幹 石川直章)

小樽市総合博物館
http://www.city.otaru.hokkaido.jp/kyouiku/museum/museum.htm

本館
小樽市手宮1-3-6
TEL.0134-33-2523
FAX.0134-33-2678
休館日 毎週火曜(祝日の場合は翌日)・年末年始

運河館
小樽市色内2-1-20
TEL.0134-22-1258
FAX.0134-33-2523
休館日 年末年始のみ

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