北海道の鉄道の発祥の地・手宮にある国の重要文化財「機関車庫三号」が、「近代化遺産の日」(10/20)に合わせて、18日(土)午前・午後の2回、特別公開された。
機関車庫などがある旧手宮鉄道施設は、幌内炭鉱で産出した石炭を船に積み出すため、開拓使の米国人技師ジョセフ・クロフォードが計画し、1880(明治13)年に工事に着手。翌年の12月、札幌と小樽間で開業した幌内鉄道の終点として、建設・整備された施設。
1885(明治18)年に竣工した機関車庫三号は、現存する施設では国内最古のもので、国の重要文化財に登録されている。フランス積みのレンガ造りで、扇形が特徴的。北海道庁赤レンガ庁舎を手がけた平井晴二郎が設計。室内は、間仕切り壁で東側に一室、西側を車両2台分の空間に区分されている。
2005(平成17)年度の耐震診断などの調査で、耐震性能が不十分で老朽化が進んでいると診断された。このため、2006(平成18)年6月から、国庫補助事業として、保存修理事業が始まった。
初年度は、屋根や建具、内壁などの解体作業が行われた。竣工以降の補修工事などの変遷が、解体調査で明らかになった。翌2007(平成19)年度には、竣工当時の姿に復原することが国から認められ、小屋組の復旧や外壁の補修などが実施された。
18日(土)の特別公開では、午前23人・午後13人の計36人の参加者が、今年度から行われている建物の復原工事や、取り外して復旧した部材の組み立て作業などを見学した。
「破損した建物をただ修理するのではなく、保存修理工事報告書を作成し、古い部材を補修して再利用する修理方針を原則としている。石材は、小樽軟石が使用されているが、現在は採掘されていないので、解体された建物に使われていた小樽軟石を再利用している。耐震補強は、将来、簡単に外すことが出来るように、丸見えになってしまうが、鉄骨フレームで行った」(財団法人文化財建造物保存技術協会・前堀勝紀・修復設計課主任)と説明した。
参加者たちはヘルメットをかぶり、少人数の班に分かれて、破損・腐朽した部分を除去した木材と新しい木材を張り合わせたものや、平成18年と記した新しい木材の焼印、防腐剤塗布などの作業を見学。足場を上って、修理が完了した小屋組材の組み立て部分やアーチの補強などを見て、「これは大変な作業だ」、「工事現場に入らなければ、絶対分からないこと。面白い」と感動の様子だった。
現場見学に参加した小樽探検隊の渋間靖隊長(15)は、「工事期間中は、建物の周りが囲まれて見えないので、こういった機会に、補修工事の様子が見れて大変嬉しい。担当の方のお話があったけど、やっぱり地域のものを地域で残していくこと大事だと、改めて感じた」と話していた。
今年度は、正面のアーチの積み直し、内装や外構の工事を行う。建物の回りの防護ネットなどを外し、3年ぶりに顔を覗かせるという。明治に竣工された当時の姿がよみがえった建物が、久しぶりにお目見えすることになる。工事の完成は、来年秋の予定。
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