新市立病院の建設で基本設計を中断したことで、「山田勝麿市長及び山田厚副市長は、連帯して2,581万円を市に返還せよ」 とする住民監査請求の意見陳述が、8月19日(火)13:30から、市役所別館4階・第3委員会室で行われた。
この請求人の意見陳述は、小樽市で初めて一般公開されて行われた。委員会室には、請求人2人、監査委員2人、監査委員事務局3人、報道6社、一般傍聴者3人、市議会議員3人が集まった。
請求人2人と監査委員(木野下智哉・久末恵子委員)の2人が、テーブルを挟んで向かい合い、意見陳述が始まった。
請求人の松浦光紀さん(62)は、「広報をずっと遡って読んでみると、基本設計の発注は、建設場所が決まって、なおかつ財政的見通しがついてからとなっている。確かにそうだと思う。銀行は、土地がないところに家を建てようとしても、金を貸してくれない。基本設計、実施設計、建築の中で、一番重要なスタート地点だが、ひどいなと思っていた。なかなか起債が下りない中で、市立病院調査特別委員会で、吉川参事が、これが認められる認められないということではなくて、これは絶対認められる実効性のある計画をつくって認めてもらわなければならないと言った。しかし、収支計画そのものが動いてしまった。非常に危ない発注の仕方。その後、色々あって中断という形になったが、9月の特別委員会の議事録を見ると、ほどんどの議員の中で、問題の話し合いがない。本当に市議会が機能しているのか疑問。
小樽市と久米設計札幌支社の契約書には、中断に関する記載事項がない。中断したときの損害賠償が読み取れなかった。一方で、副市長は、起債の関係が整えば、再スタートしたいと言っておきながら、契約を解除した。解約料を支払うということは、約束を白紙に戻したということ。白紙に戻したということは、また、再契約しなきゃいけないということ。契約に対するひとつひとつのことが、非常に雑に扱われているという気がしている。仮に、契約書第8条により、周りの環境によって、整えられない部分については一時中止します、環境が整った時はまたやり、残りの部分はそのままやっててくださいという条項がある。一時中止ということが出来るとすると、本当にこの解約料2,581万円が必要だったのか。もう少し、ひとつひとつ丁寧に、次の段階に残るような作業をして欲しかった。
金利を入れて総額200億ぐらいの大事業に対して、市長の任期が4月に切れる年度末の3月に、その中で、200億近い事業の基本設計業務を発注するのは、一般人として理解出来ない。違法性は、44億を貯め込んでいた会計処理について、地方公営企業法に違反する。不当性は、財政の裏付けなく基本設計を発注したこと。契約に基づいて解約金を払っているといっているが、2,581万円の妥当性、やった仕事に対して支払うというのが非常にアバウト。例えば、1階部分で10%とか、2階部分で20%、日割り制とか、客観性、具体的な契約があれば、市民の皆さんは、仕方ないな契約したんだからということになる。必要があるときは契約を解除することが出来るというのは、一般の人は出来ない。業務を受けた人は本当に困る。こういう部分をベースにして支払っているのは不当ではないか。久末さんは、基本設計のときに賛成しているので、ぜひ、公平な判断をして頂きたい」 とした。
高橋朋子さん(55)は、「家を建てる場合、土地を探して、その土地を購入するなり、賃貸契約する。その次の段階で、それに充てる資金、その次に、資金に見合った家を建てる。これが常識で、それ以外は考えつかない。ところが、今回、前段で、土地もお金も用意出来ていないのに、基本設計を発注した。そんなことは考えられない。常識で考えられないので、常識人のみなさんの判断を頂きたい」 と熱く語った。
木野下智哉・監査委員は、「契約うんぬんというのは時間がずれちゃいますので、契約というのは1年前の話になるので、契約が良いか悪いことかは監査の対象とは変わって来ますので、この点が、請求の趣旨ではないということか認識したかった。それで、起債許可が受けるような状態でなかったことが明白だったにも関わらず、基本設計の業務委託したということは監査請求の対象と外れる。払った金額ということなら、監査請求の対象になりますから、そこを中心に我々は考えたいと思っている。その間の経過措置もあるので、その辺も踏まえて考えたい。違法か不当か適切な金額かは、これから色々聞かなきゃいけないし、久米さんとどんな話し合いをしたのか、十分検討して結論を出したい」 とした。
これに対し、松浦さんは、「(契約そのものが)監査請求の対象になるかならないかとあったが、それは(解約料支払いに)ずっと繋がっている」。高橋さんは、「今日のこの場で、監査対象からもれてしまうことは、市民はどこに訴えれば良いのか」 と質したのに対し、市議会議員でもある久末恵子委員は、「議会事務局の方においで頂ければ、対応します」 と述べた。
請求人のテーブルには、水もマイクも無く、意見陳述開始直前に、請求人からは、「水はないのか」、一般傍聴者からは、「全然聞こえない」、「マイクを使って下さい」 と不満の声が上がった。
意見陳述のあと、高橋さんは、「意見陳述の公開が初めてということだが、市民のために働いているなら、ちゃんと市民の人が聞ける態勢をとるべき。温かい気持ちがない。自分たちが録音するマイクだけ用意して、市民に聞かせるためのマイクはなかった。水も用意されておらず、水はないのかと言ったが、ないと言われた。買ってくると言ったら、ようやく水が出てきた。控え室もなかった」 と指摘した。監査委員会が市民を呼んで意見陳述を求めているのにも関わらず、会場の準備不足が露呈して、請求人・傍聴人の怒りを買っていた。
この意見陳述後は、関係人からの事情聴取、関係書類の調査、報告書の作成・審議、監査結果(理由あり・理由なし)の決定を行い、監査結果の通知を10月6日(月)までにすることになっている。
市長・副市長が、勝手に中断した基本設計業務委託で、2,581万円の解約料の支払いが不当であり、市に返還せよという市民の声を、監査委員会がどのように判断するか、その力量が改めて問われることになる。
この住民監査請求に対し、山田勝麿市長と山田厚副市長は、「適正に事務を行ってきたものと考えておりますが、今後、監査委員が監査の手続きを進めていくことになりますので、その推移を見守りたいと思います」 とコメントした。
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