「これからの坂牛邸のあり方を考える」ミニフォーラムが、5月14日(水)18:00、小樽運河プラザ1階多目的ギャラリー(色内2)で開かれた。
ミニフォーラムは、小樽建設事業協会(中野豊会長)の主催。「小樽の歴史的な建物をどう保存活用するか考える場として開催した。古いものを壊し、新しいものを建てることが、理想的なビジネスと思っているが、小樽が元気にならないと、建築業界も元気にならない。官に依存するだけでなく、何か民間でしないといけないと考えていたところに、坂牛邸の現当主・正志さんから、坂牛邸のあり方についてご相談を受け、フォーラムを開催することになった」 という。
市民と市役所建設部職員など約120名が参加した。18:15から、NPO法人旧小熊邸倶楽部の東田秀美理事長の講演「北海道内の歴史的建造物の活用について」が行われた。中標津町の「旧農業試験場」や札幌市の豊水小学校の保存活動の2事例を挙げた。
「中標津町の地域の方から、旧農業試験場が取り壊されることになったが残したいと電話があった。地域住民で保存推進委員会が発足し、いつか建物を取り壊す時に必要な費用1,500万円を自ら負担することで、建物を残すことに成功した。コミュニティレストランとして活用し、家賃収入で、10年間で1,500万円の積立を目指している。さらに、NPO法人ができ、1年に1回イベントを開催し、花火大会などを行い、観光客が増えている」 と話した。
18:50からのパネルディスカッションでは、「建設業界の方々が役所とは別に会議を開いたのは初めてだと思う。1回に、主催と共催をすることは、いままで初めて。画期的なこと。建設業界が繁栄すれば、街が反映する。今、それが生まれようとしている」(駒木定正・北海道職業能力開発大学校准教授) と語った。
「建築屋として、図面のあるものを工事するのが仕事だったので、建物の保存活用に携わることは無かった。車を会社において飲みに出て、次の日の朝、家から会社まで向かう時に、この坂牛邸を見ていた。しかし、坂牛さんから相談されるまで、それが坂牛邸だとは知らなかった。これは、壊されてはいけない、残さないといけないと思った」(小樽建設事業協会・中野会長)。
「耐震性はどうなのか、その辺を考えないと、もしも事故があったときは大変。悪いことを含めて考えなければいけない」(北海道建築士会小樽支部・尾田正行・まちづくり委員)。
「建築法や防火法が難しい問題。火事の時どうするかが一番の問題。市で、建築法を多少優しくしてくれればなんでも使えるようになる。」(北海道建築士事務所協会・野々瀬雅昭小樽支部長)。
「喫茶店として、コミュニティカフェとして活用し、材料費と光熱費をもらうだけでは出来ないのか。建築物ガイドをその場から出来ないか」(東田コーディネーター)。
「小樽は、歴史的建造物の存在をまだまだ外にPRできていない。小樽のポテンシャルは素晴らしいものを持っている。21世紀のまちづくりを考える上で、坂牛邸の保存活用がきっかけになればよい。札幌では出来ないことが、小樽では出来る。しかし、今、小樽では、歴史的建造物など様々なものが点の分散となっていて、街全体が線につながっていない」(遠藤建築アトリエ・遠藤謙一代表取締役)。
「建築基準法とは、生命と財産を守るもので、妥協するよりも別の改善方法を考えないといけない」(嶋田和男・小樽市建設部長)。
「お上の方の基準法という壁が大きな問題」。「NPOを立ち上げて、小樽公園の管理をさせてもらい、それで建物の維持管理費が確保出来ないか」 と一般市民などからも、坂牛邸のあり方について様々な意見が挙がった。
坂牛邸の現当主・正志さんは、「取り壊して更地にすることは簡単だが、それだけはやってもらいたくない。なんとか存続させてもらいたい。例えば、ミニコンサートやサークル活動の場に活用したり、野外コンサートなどを開催出来るようになれば良いな」 と、坂牛邸のこれからのあり方に期待していた。
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