市内の中心商店街の不振から、老舗靴店などが完全閉店に追い込まれ、撤退を余儀なくされている。
サンモール一番街商店街で90年も営業を続けてきた老舗の「おたる靴工会」と、都通り商店街で45年間の営業を続けてきた「靴のトミヤ」が、相次いで閉店セールを行っている。
相次ぐ靴店の撤退は、サンモールや都通りの中心商店街で中核をなしていた丸井今井小樽店が撤退し、買い物客が激減したことが要因となっている。丸井今井撤退後、すでに2年半が経過しているが、跡を継ぐテナント誘致が一向に進まず、大型の“幽霊ビル”が商店街に大きな影響を及ぼしている。
サンモール一番街商店街にある紳士・婦人靴販売の「おたる靴工会」(稲穂1・荒野尚久代表取締役)は、3月21日(金)から「完全閉店セール」を実施中で、靴の在庫が無くなり次第、5月中旬を目処に閉店することになった。
荒野代表取締役(67)は、「丸井撤退から売上げが下がった。毎年、今年の売上げが底だろうと思ったら、その翌年はそれよりもっと下回ってしまった。人の通行量もどんどん減ってきているし、昨年、体を悪くして入院したので閉店することにした。もともとは、この会社の名前の通り、靴職人が作った会社だったが、経営がうまくいかず、私の父が派遣され、再建に力を入れた店だった。昭和47、48年が売上げのピークで、今はその時よりも売上げは4分の1になってしまった」 と、売上げの減少で撤退に追い込まれたと話している。
また、都通り商店街にある「靴のトミヤ」(稲穂2・中道忠雄社長)は、3月いっぱいで閉店を決めており、2月中旬から「45年間ありがとうございます。完全閉店」の売り尽くしセールを行っている。
中道社長(70)は、「今までは、丸井と長崎屋を行き来する買物客が商店街を通って、買い物をしてくれていたが、丸井の撤退で、長崎屋で買い物をしてそのまま帰ってしまうことになり、通行量が減った。夫婦二人で45年間続けてきたが、この2~3年は本当に景気が良くない。生活できる収入がない。このまま続けても商売にならないので、春物を仕入れる前に閉店しようと決め、2月から売り尽くしセールをやっている。ここら辺の家賃の相場は1坪7,000円が平均だが、うちはオーナーが東京の人なので、8坪で25万円もかかっている。10年前なら勢いがあって商売出来たかもしれないが、今では到底無理」 と、窮状を語る。
丸井今井撤退後、山田勝麿市長は、毎年、テナント誘致は今年中には目処をつけたいと言ってるが、2年半経っても一向に表立った話はない。昨年4月の選挙では、「地域経済と中心市街地の活性化」をマニフェストに掲げ、「旧丸井今井小樽店の再活用に積極的に取り組みます」としているが、実情は次々と撤退を余儀なくされる商店の屍が累々と横たわっており、小樽の商店街のシャッター化がさらに進むばかりだ。
商店街の店主は 「老舗の靴工会の撤退は、丸井今井撤退の連鎖だ。早く跡地を有効活用してもらいたいが、いつになっても決まらないのでは、活用策が決まったときには、商店街には誰もいなくなっているかもしれない。基本的に、丸井撤退はマイカル(現・ウィングベイ小樽)のせいであって、この不満は根強いものがある。マイカルだって家具の長谷川が撤退するとか良くない。悪い意味で分散してしまった。それに、築港駅側の店ばかりが撤退しているし、市が当初思っていたJR・バスでの利用客は少ない。小樽駅から築港までJRでは行かないよ、みんな車で行くよ。その上、マイカルは市に固定資産税を払っていないのだから、我々だって税金なんて払いたくなくなる」 と、市の施策に不満が一段と高まっている。
小樽は、市長の言う「地域経済と中心市街地の活性化」 どころか、「地域経済と中心市街地の衰退化」 が進むばかりだ。
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