小樽市(山田勝麿市長)が、開会中の第1回定例会に提出した、平成20年度病院事業会計予算は、ここ数年の激減する患者・医師数を全く無視した”取らぬ狸の皮算用”の予算編成となっている。
誰が見ても、平成20年度内には、到底、達成不可能な根拠ない数字が羅列されており、悪化の一途の病院会計の惨惨たる実態を、市民から覆い隠そうとする市側の意図が、ありありと見てとれるものとなっている。
その最たるものが、平成20年度予算で計上されている医業収益の見通し。平成19年度最終予算では、約8300万円のマイナスにも関わらず、20年度当初予算では、一転して約6億円のプラスとしている。その根拠は、入院患者が一日平均4人増とし、年間で1,073人の増加を見込み、外来では、前年比一日平均3人の減少で、年間わずか2,415人という数の減少しか見込んでいないため。
この6億円の収益で、19年度末の73億8,671万円の累積欠損金を、20年度当初予算では、67億8,411万円に減らすとのあきれた予算編成となっている。
これまで、平成13年度から19年度まで、年間平均約3万人の患者数が激減してきている。19年度末でも28,568人もの患者数が消え、入院で16,452人、外来で12,156人が一年間で減少する計算となっている。入院収益は56億1,300万円で、前年度比6,300万円(1.1%)の増とし、外来収益は28億8,100万円で、2,400万円(0.8%)の増として計上している。
市立2病院は、患者や医師の減少で、平成20年度もさらに収益が悪化するのが自明の理なのに、収益がプラスに転じるという驚くべき机上のマジックを駆使した病院会計となっている。
樽病では、2月、3月、さらに9月にも医師の退職が予定されており、医師一人で約3億円の収入を上げていたことを考えると、さらに収益悪化することは明らか。さらに、年々減少している患者数が、今年度は、一桁もちがう患者数に留まるという予測の根拠は、まったく見えてこない。
平成20年度当初予算で見込む約6億円の収益は、患者や医師の減少で、到底、達成不可能な数字と分かる。この6億円の収益で、累積欠損金の6億円の減少を見込んでいるが、19年度末の約74億の累積欠損が減る余裕はなくなる可能性が大きい。
新病院建設計画の中断や現病院の改革プランの策定で、市のリーダーシップが大きく揺れる中、昨年11月に行った病院事業の資金収支計画の見直しでは、約5億円の減収を一般会計から補てんすることにした。これが、一般財源の不足につながり、職員のボーナス削減となった。病院資金計画は、さらに下回る公算が大きく、財源の捻出で、今後も職員の人件費カット頼りになりそうだ。
平成20年度病院事業当初予算のズサンな編成が明らかになったことで、市立病院からさらに患者や医師が逃げ出す公算が大きくなった。
また、一般会計から病院事業会計への繰出しは、平成19年度で16億3,000万円、20年度で17億5,000万円もの巨額な数字になっている。一般会計も、病院のためにこれ以上繰出す金は一銭もない状態になっており、「何億足りないとかって、親のところにすねかじりに来ても、今の小樽市の財政では、すねをかじる足はない。出せない」 (山田厚副市長)と、共倒れの”親子心中”から逃げ出すのに、汲々としている。
この予算編成で、すでに行き詰っている病院経営が今年度中にも破綻する可能性が益々高くなった。平成20年度病院事業会計予算は、まさに、市立小樽病院崩壊への道筋を指し示したものとなっている。
このズサンな病院会計を審議する市議会が、すんなりとこの予算を認めるとなると、市議会議員一人一人の存在理由が問われることになり、この予算に市会議員がどう対応するかを、市民は厳しく見つめる必要がある。
◎市立2病院の患者数(入院・外来)の推移
◎平成20年度 病院事業会計予算(対 平成19年度最終予算比)
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◎平成20年度 病院事業会計予算(対 平成19年度最終予算比)