市立小樽美術館(色内1)は、1月26日(土)から5月18日(日)まで、人物表現を中心とした企画展「家族を描く・暮らしを描く」を開催する。
この企画展は、父母や兄弟、妻、子供たちなど家族を題材にした、21人の画家の作品52点の展示。「針水の子供の絵」として、生前からかなりの売れっ子だった田中針水氏の記念コーナーも設けている。
田中針水氏は、小樽出身の日本画家で、小樽中学を卒業後すぐに上京し、川合玉堂氏の家に書生として入門。玉堂氏は、狩野派の作風に写生を取り入れた穏やかな風景画で知られ、弟子たちのほとんどが風景を描いていた。しかし、針水は、弟子入りしてすぐに足を事故で失ったため、写生に同行することが出来ず、やむなく人物を描いていたという。
初期は、風雅な生活感のある和服姿の女性や女の子を描き、大正のよき時代を吸収した典型的な日本画だった。戦前から、帝展に出品すれば必ず入選するという躍進ぶりで、戦後も引き続き日展で活躍した。
戦後の作品は、日本画の伝統である線を抑えた洋画的な表現になった。「子供たちの表情もふっくらと仕上がり、何の気負いも感じられない、色彩も嫌みがなく、日本画で大切な品があります。誰でも好まれる絵であったことで、生前の人気もあった」(星田七重学芸員)としている。
針水氏の記念コーナーには、紙や絹に描いた日本画12点が展示される。売れっ子だった針水氏の作品は、所在調査が難しいが、同氏の次男から作品資料の寄贈の申し出があったことから、このコーナーを設置することになったとしている。遺族の手元にある想い出の作品が並ぶことになる。
このほか、中村善策や渡辺祐一郎、中野五一など、同館がコレクションする作家20名の作品が展示される。作品それぞれにあるエピソードの解説のほか、画家の娘や息子、孫たちからの想い出の文章も一緒に飾られる。「画家本人の家族と生活からテーマが選らばれているので、モデルとなった人物と画家との関係がそれぞれに垣間見られ、興味深い内容であると思います。家族の絆が稀薄と言われる現代にあって、全体に懐かしい展覧会になっている」という。
同企画展は、1月26日(土)から5月18日(日)まで。休館日は月曜日。入館料は一般300円、市内在住70歳以上・高校生150円、中学生以下無料。
また、同館1階の中村善策記念ホールでは、常設展「中村善策名品選1950~1970年」が、同期間で開かれる。日本を代表する風景画家・中村善策の画が確立した、1950~1970年の20年間に焦点をあてた作品展となっている。約20点の油彩と資料が展示される。
問合せ:0134-34-0035
◎市立小樽美術館HP