小樽市水道局(工藤利典水道局長)は、市の水がめである「奥沢水源地」(天神2)を、土木学会選奨土木遺産と文化庁の登録有形文化財に登録しようと、調査を始めた。
小樽市の水道発祥の地として知られている奥沢水源地は、1914(大正3)年に創設され、道内で3番目、全国でも21番目の古さを誇る。顧問技師・中島鋭治工学博士の指導のもと、当時の最先端の工法や技術が駆使された。冬の豪雪や春の雪解けなどで人力による工事は難航し、築造に約6年9ヵ月を要した。1985(昭和60)年に、近代水道百選の一つに選ばれている。豊かな森と自然に囲まれた勝納川上流の原水を飲み水に変える、今も現役バリバリの水道施設。
奥沢ダムからの溢水を12mの落差を10段で流下させる階段式水路(階段式溢流路)は、周囲の自然と調和した美しさを見せる。春の雪解け時にはゴウゴウと流れ落ち、流路にかかる水管橋からは、四季折々に見事な景観美が見られる。
これまで、奥沢水源地を開放する水道週間を除き、水管橋の手前で立ち入り禁止としていたが、今年6月から、初めて水管橋が市民に開放されることになった。市水道局では、2006(平成18)年から2007(平成19)年までの2ヵ年で、この階段式水路の大規模補修工事を約1億6,000万円かけて行っていた。
2007(平成19)年12月末のこの工事の終了とともに、今年1月に入り、この奥沢水源地全体を、土木学会選奨土木遺産と文化庁の登録有形文化財に登録しようと、調査研究を始めた。
工藤水道局長は、「奥沢水源地は、小樽市の水道施設の象徴的なもの。小樽の川が流れなくなったとしても、この奥沢ダムから、小樽市民に1~2週間は供給出来る。この水道資源が、観光都市小樽としても活用出来ると思う」と話している。
「市民に安全な水を供給するための施設なので、調査は慎重に行う」(担当者)と、登録時期は未定。登録後、奥沢水源地全体を解放するかは、水道資源保護の立場から慎重な検討を行うことにしている。
90年以上もの間、小樽市民に自然に近い飲み水を供給している水道施設が、今度は、観光資源として活用されるかが注目される。
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