右前肢が切断され、後頭部にひどい傷を負った瀕死のアオウミガメが、先月、留萌の海岸で保護され、直ちにおたる水族館に搬送された。
同館では、6名の部員による「チームウラシマ」を立ち上げ、懸命の治療が続けられている。
このウミガメは、10月15日、留萌管内の初山別村の海岸で保護され、おたる水族館が受け入れ、直ちに抗生物質の注射や点滴、患部の止血と消毒を行い、翌日から流動食の強制給餌を始めた。
10月23日には、若干元気が回復し、点滴を終え、リハビリ用プールで飼育を開始した。28日には魚肉と海草の流動食にし、排泄もみられるようになった。飲み込んでいたビニール片も排泄した。11月8日は、自分で魚の切り身の餌を食べるようになり、13日現在、少しずつ回復傾向にはあるが、後頭部の傷はまだ予断を許さない状態であるという。
“太郎”と名付けられたこのウミガメは、甲長33cm・体重4.8kgで、推定1〜2歳、性別は不明。
海流に乗ってやってきたと思われるが、北海道で見られるのは稀で、過去にオホーツク海で確認されたという情報がある。
右前肢が切断された原因は不明で、過去にはサメやスクリューによる事故例があるが、このカメの場合はどうして切断されたか不明。比較的新しい傷なので、保護の少し前に切断したと考えられるという。
今後は、「このような野生生物は本来自然に戻すべきであり、そうしたいと考える。しかし右前肢がないことから、野生復帰させて生き延びることができるかは懐疑的である。現在は、自力でよく餌を食べるようになることと、右前肢と後頭部の傷が治ることを目標にしたい」としている。
懸命のリハビリ治療を続ける「チームウラシマ」の努力が実って、この太郎君が、竜宮城のある豊かな海に、帰る日は来るのだろうか。(写真提供:おたる水族館)
◎日本ウミガメ協議会HP
◎おたる水族館HP