11月9日(金)、小樽市役所に”激震”が走った。山田勝麿小樽市長が、選挙公約に掲げた最重要課題の新病院建設で、すでに発注済みの基本設計の委託業務を中断し、今年度に予定していた用地購入も先延ばしするという、方針転換を図ったことが分かった。
3期目の任期に入ったばかりの山田市政にとって、新病院建設は、何が何でも実現しなければならない選挙公約だった。しかし、3期目のわずか6ヶ月で、新病院建設に”白旗”を掲げる羽目に陥った。
9日(金)、小樽市役所の幹部たちは、この対応に追われた。7日(水)から10日(土)まで、「小樽港貿易協議会 中国経済交流使節団」として、中国出張中の市長に代わり、副市長、総務部長、財政部長らが、市議会の各会派を巡り、12日(月)に開かれる市立病院調査特別委員会の前に、「新病院建設に対する方針」と「病院事業資金収支計画」の説明に走り回った。
このため、この日会議を予定していた小樽市議会活性化検討会議は、中止となった。基本設計中断の説明を受けた市議会各会派には、驚きが広がり、断続して会議が開かれ、今後の対応を模索していた。
市は、新病院建設に対する今後の方針として、「病院事業を取り巻く状況が大きく変化してきており、新病院建設に係る作業は、今年度の病院の入院・外来収益や平成20年度の国の財政措置等の動向を見極めた上で進める必要があると判断し、①新病院建設用地の購入を平成20年度に変更する。②基本設計については、平成19年度の委託業務を一時中断し、平成20年度の用地購入に係る起債申請の時期を見極めて再開する」 と、これまでの方針を転換することを明らかにした。
と同時に、44億円の不良債務解消を目指す病院事業資金収支計画が、「今年度上半期の入院・外来収益では、不良債務解消の見込みに届かず厳しい状況になっていることから、計画期間中の病院の入院・外来収益の減収分を病院の経営努力と一般会計からの繰入金増額で補てんすることにした」 と、見直しの資金収支計画を説明したという。
この見直し資金収支計画は、これまで、累積赤字44億円の解消を、病院会計と一般会計で半分づつの22億円の負担としていたが、今度は、病院会計が17億3,900万円、一般会計からは5億円を追加し、26億6,000万円の負担とした。いわば、一般会計が病院会計に追い銭をした格好で、一般会計の市民負担増での辻褄合わせを図っている。
新病院建設の基本設計は、今年4月、株式会社久米設計札幌支社に発注しており、現在、委託業務を遂行中だが、これを一時中断するという異常事態に追い込まれることになった。
市は、久米設計との契約を一方的に破棄しても、契約違反とならない出来高払いとなっているとしているが、約6,000万円の基本設計費が、現在までどれくらい進行していたかで請求されることになり、結局は、これも税金の無駄遣いとなって市民に跳ね返ってくる。
今回の市の基本設計を中断し、棚上げする方針転換は、新病院建設での起債許可が見込めないことが大きな要因となっている。今年度中の起債許可の見通しが立たなかったことが、市長の”白旗”につながった。
公立病院改革のガイドラインを策定している総務省の公立病院改革懇談会(長隆座長)が、改革プランの作成を各自治体に課し、厳しい数値目標を盛り込んだ国の方針から、道との起債の事前協議もうまくいかなかったことで、市はついに、お手上げバンザイ”白旗”状態となった。
市は、「基本設計の2007(平成19)年度の委託業務を一時中断して、2008(平成20)年度に用地購入の起債の時期を見極めて再開することとし、病院の統合新築を進めていく」 としているが、現状の病院経営の収益状況では、44億円の不良債務の解消は難しく、起債許可の基準を到底達成出来ないことは明らかだ。このため、今回の一時中断が再開出来ると考えるのは、小樽市だけだ。病院会計への追加支出をするだけ、一般会計の赤字が拡大し、小樽市が崩壊の危機に立たされることになる。
結局、小樽市の新病院建設は、大幅な縮小か白紙撤回に追い込まれることになり、今後、風前の灯となった公約の責任の所在が、大きく問われることになろう。
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