北海道大学から贈られた釧路湿原のイトウを1年間飼育した小樽海洋少年団の子供たちが、6月2日(土)、大きく育てたイトウを、釧路湿原に放流する旅に出る。
小樽海洋少年団は、昨年5月、同団元事務局長の平野井篤さん宅のイトウ養魚場(桜5)で、幻の魚イトウの人工授精を体験した。
イトウは、本州で絶滅し、道内では後志や宗谷、釧路などに分布するが、道内河川環境の悪化で生息数が激減している。国際自然保護連合のレッドリストで、最上位の「絶滅危惧種1A類」に登録され、その自然の姿を目にすることが難しいことから、幻の魚とされている。
このため、平野井さんが、魚の採卵と授精の貴重な体験で、自然界の真実を伝えたいと、人工授精の実習を行った。団員一人一人が、イトウの体の中にある卵を押し出し、メス3匹から約3,000粒の卵を採卵し授精させた。
しかし、3,000粒のうち、1尾だけしかふ化せず、さらにその1尾も死んでしまい、人工授精は失敗に終わってしまった。この体験の模様を小樽ジャーナルで知った「北海道大学北方生物圏フィールド科学センター七飯淡水実験所」の木村志津雄所長から、昨年6月、純粋な釧路湿原4代目の親魚からふ化した稚魚200尾が贈られた。
同団はイトウ班を結成し、成長の過程や水質管理、投餌など飼育観察を1年間体験することに。日曜日の海洋少年団の活動の後、イトウの飼育水槽がある事務所に向かい、イトウの成長を肌で感じた。イトウが大きくなるにつれ、粉末の餌から固体の餌に変えたり、給餌の回数も減らすなど、一生懸命取り組んだ。
現在は、85匹が約10cmから15cmにまで成長し、平野井さん宅の養魚場で飼育されている。飼育から約1年となり、母なる川・釧路湿原に放流するため、同団員14人と保護者9人の計23人が、6月2日(土)に放流の旅に出る。
「どんどん大きくなったので、飼育は大変だったけれど、すごく嬉しい」(朝里小5年・田中亮圭くん)。「あまり魚に興味がなかったが、イトウを飼育してみて大好きになった」(潮見台小5年・菊池立樹くん)。「餌をやったり、酸素や水温を計ったり大変だったけれど、大きく成長してくれたので良かった。釧路湿原に放流出来るようになって嬉しい」(量徳小6年・佐藤拓実くん)。
「人工授精に失敗して200尾もらったけど、85匹に減ってしまった。でも、大きく成長したので嬉しい。放流しても他の魚に食べられないで、もっと大きく成長してもらいたい」(向陽中1年・斉藤友飛くん)。「放流しても他の大きな魚に食べられないように、元気に育ってほしい」(向陽中1年・三部良規くん)と、釧路湿原に放流するという夢が叶い喜んでいた。
同団は、6月2日(土)07:00に小樽を出発し、16:00から阿寒郡鶴居村の(有)大津養魚場近くの湿原に注ぐ川に放流する。
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