小樽市博物館メールマガジン89号の紹介


 例年よりも暖かい日々が続いていますが、暦はいつのまにか進んで、もう12月に入ろうとしています。本格的な冬はすぐそこまでやって来ているはず、急な気温の変化に体調を崩さないよう注意したいですね。


 毎年恒例のおもちつきも近づいてきました。新館の準備のため、行事を減らさせていただいている今年ですが、おもちつきは12月10日(日)に予定しておりますので、楽しみにお待ち下さい。


博物館メールマガジン89号をお届けします。


 このメールマガジンは、博物館、博物館友の会の最新の情報、お願いを皆さんにお届けします。多くの方にご利用いただきたいと思っております。お知り合いにもお勧めください。


☆博物館からのお知らせ


◆博物館のおもちつき


 北海道で米が十分にとれなかった明治のはじめ、人々は正月だけはもち米を用意しました。かつては年末に各家庭でおこなわれていたもちつきを、博物館で今年もみなさんといっしょに行います。自分でついた、つきたてホカホカのおもちで、あんこもちやきなこもち作りに挑戦してみませんか。


【日 時】12月10日(日)10:30から、午後1:30からの二回


【場 所】博物館第一展示室


【料 金】通常の入館料がかかります


◆新博物館開設準備室のHPができました。


 アドレスは


 http://www.city.otaru.hokkaido.jp/kyouiku/sin-hakubutu-kan/hakujunnbi.htm


 新博物館開設に関わる各種資料を公開しております。新博物館の基本計画、意向調査の集計結果、先日の懇談会の資料、質疑などが現在アップされております。今後も計画の進捗に併せて随時更新を行いますので、ご覧いただければ幸いです。


◆常設展の一部変更「天下の絶景オタモイ海岸」


 小樽市民に愛されてきた景勝地「オタモイ海岸」。オタモイの名が全道に知れわたるきっかけになった料亭「竜宮閣」の物語と、オタモイ海岸に残された特殊な自然環境について、常設展の一部を変更してご紹介します。


【展示期間】平成18年4月12日(水)~平成19年2月頃までを予定


【料 金】通常の入館料


【会 場】第一展示室(展示ケース2カ所)


【展示内容】


・竜宮閣の上棟式、弁天食堂の写真 


・オタモイ遊園地のパンフレット


・竜宮閣の印半纏 


・オーナー加藤秋太郎が経営していた料亭「蛇の目」の絵皿 


・オタモイ海岸の露岩地周辺に生息する希少植物の写真、標本(バシクルモン、ピレオギク、エゾマンテマなど)


・オタモイ海岸で見られる特徴的な鳥類、昆虫の標本(イソヒヨドリ、ウミガラス、エゾチッチゼミなど)


☆小樽の森から海から28 初冬の赤岩山を歩きました


 いつもの年よりも暖かいとはいえ、野山を吹き抜ける風はだいぶ冷たくなってきました。フィールドを歩いていても人と出会うことがとても少なくなりました。


 先日、赤岩山の遊歩道「小樽海岸自然探勝路」を歩きました。この時期に歩いてみたのは初めてなのですが、落ち葉が敷き詰められた遊歩道はとても歩きやすく、また、すっかり葉の落ちた林は遠くまで見通すことができ、夏の間は気がつかなかった複雑な地形や、人工林と天然林との区分けの様子を知ることができました。


 赤岩の岩場には人の近づけない場所がたくさんあります(ロッククライミングをされる方は別ですが)。いい機会なので、そういう場所に生えている樹木などを双眼鏡で観察しましたが、見るからに珍しそうな植物が次々と目に入ってきます。このような手の届かない場所には、私たちの知らないような動植物がまだまだ人知れず生息しているかもしれません。そんな場所が街のすぐ近くにたくさんあるということが、この辺りの堪らない魅力だと感じます。


 鳥たちの姿も見つけやすくなり、アカゲラやハシブトガラなどおなじみの顔に混ざって、アトリやツグミなど、夏には見かけない鳥たちの姿も見かけることが出来ました。新聞になえぼ公園でギンザンマシコが観察されたお話がでていましたので、期待していましたが、残念ながら見かけることはできませんでした。


 さすがに花はもう咲いていませんでしたが、ツルリンドウ、ツルシキミ、マイヅルソウの赤い実や、エゾユズリハの黒紫色の実が目立ちました。ツルシキミやエゾユズリハなどの常緑の低木が多いのがこの地域の特徴で、スミレやクルマバソウなどの多年草の葉も青々と残っており、冬枯れの森の中でも緑色が多いのが印象的でした。


 そんな中で特に目についたのが、青々としたナニワズの葉と、その中心部に鈴なりについたつぼみです。ナニワズは春一番、雪解けと共にさわやかな黄色い花をさかせる低木で、早春の花としておなじみです。「ナツボウズ」の異名がありますが、春に花を咲かせた後、は葉を全て落として「夏眠」の状態に入ります。夏が終わり秋になると再び葉をつけ、そのまま冬を越すという、普通の樹木とは正反対のライフサイクルをもった植物です。


 春一番に咲く花はすでに前の年の冬に入る前に開花の準備を整えています。少しだけ持ち帰って、顕微鏡の下で解剖してみましたが、つぼみの中には雄しべと雌しべがしっかりとできあがり、いつ咲いてもおかしくない状態になっていました。ツルシキミの木にも既につぼみが出来ていました。この植物も春先に白くて小さい花をたくさんさかせます。季節はどんどん厳しくなっていきますが、冬越しに備えるだけではなく、来年の春に向けて着々と準備を進めている生き物も少なくないようです。


 林の木々の間からは美しい海岸と少し荒れた海がいつもより間近に見えました。今回はあまり目につきませんでしたが、海ガモや海ワシなど、北の国から渡ってくる海鳥たちの姿もこれからどんどん増えてくるはずです。花咲き乱れる春や、生命の力溢れる夏も良いのですが、冷たく澄んだ空気の中で、この地域の魅力である美しい海と森を堪能できるこの季節を改めて気に入ってしまいました。


 知床をはじめ、自然の豊かな観光地ではオーバーユースの問題がクローズアップされていますが、小樽の海岸の豊かさ、美しさはもう少し知られてもよいのではないだろうかと日頃から感じています。特に地元小樽市民の関心の希薄さはとても気になります。この辺り、博物館がもっとがんばらないといけないのだとは思いますが。


 一方でうれしいニュースですが、市内の植物相について地道な調査を続けていらっしゃる「小樽野草愛好会」の皆様の最新の調査成果が博物館紀要の最新号に掲載される予定です。前回は塩谷丸山の植物322種を記録されましたが、今回は赤岩・オタモイ地区の植物509種がリストアップされる予定です。前の方でも書きましたが、この地域は到達困難な場所が多く、これだけの種類を確認するのには、たいへんなご苦労があったと思います。研究紀要は来年3月に刊行の予定ですので、楽しみにお待ち下さい。


 90号は1月15日頃配信の予定です。


<お問い合わせ> 小樽市博物館 小樽市色内2-1-20


TEL.0134-33-2439 FAX.0134-22-2350


hakubutu-kan@city.otaru.hokkaido.jp