夕張市の財政再建団体申請という“夕張ショック”が、巨額借金と2年連続の赤字予算で苦しむ小樽市の財政を、さらに大きく揺り動かしている。
夕張市の事例から、小樽市でも“赤字隠し”が行われているのではないかと、国・道の調査が8月に小樽市役所に入った。このヒアリング調査で、小樽市のこれまでの会計処理が赤字を見えにくくしている不適切な会計処理であり、改めるように指摘された。この実質的な“赤字隠し”の是正の指摘を受け、小樽市財政部では、これまで累積赤字を見えなくしていた会計処理から、赤字額を表に出して不良債権・債務とする会計処理に改めることになった。
これにより、小樽市の累積赤字額による不良債権・債務は約80億円にも及ぶことになり、市の標準財政規模310億円の20%であり、財政再建団体へのボーダーラインである62億円を超えている危機に直面することになった。現在、市では、この不良債権・債務を一挙に処理せず、年数をかけて処理し、財政再建団体への転落を防ぐ会計処理のための試算を懸命に行っている最中だ。
バブル期に踊った小樽市のハコモノ行政の失敗で、市の借金は1,273億円もの巨費に上り、その元利返済に追われている。市は一般会計と他会計からの貸付と償還、繰入と繰出を反復し、その場しのぎの対応に懸命になっている。
なかでも、一般会計から貸付けた病院事業会計の44億円と国民健康保険事業特別会計の32億円は、1999(平成11)年から2005(平成17)年までの7年間もの間、年度をまたいで一時借入金で貸付金を相殺するという、辻褄合わせの会計処理を繰り返していた。
病院の44億円と国保の32億円の計76億円と、これに2年連続赤字予算の累積赤字15億円を加えると、市の不良債権・債務は91億円と大きく膨らむことになった。このうち、国保会計は、平成18年度は28億円でスタートし、余剰金が出るため平成18年度末では22.5億円までに減るとしている。平成18年度末でも、病院の44億円、国保の22.5億円、一般会計赤字15億円を加えた81.5億円を、表に出た不良債権・債務として抱えることになり、市財政を重く圧迫する。
市は、これを一挙に処理すれば、直ちに財政再建団体へ転落の危機に直面することになることから、巨額の赤字、不良債務・債権を一度では処理せず、数年をかけ小出しに処理する方針。目前の財政再建団体転落への回避を図る、綱渡りの帳簿上の会計処理を続けることにしている。「クシャミひとつで財政再建団体入り」(市財政部磯谷揚一部長)する危機的状況の中での帳尻り合わせが続く。
「国保会計は、医療費の抑制、収納率のアップ、保険料の値上げなどで、これからも経営改善が望めるが、問題なのは病院会計だ。新谷市政時代の平成5年度から5億円を貸付け、繰出金の他に毎年貸付金が増加して44億円になった。山田市政では、この44億円の貸付金を増やさないようにと貸付金はやめて、一般会計からの繰出金だけにした。これが毎年12億円から14億円ある。
道から赤字が見えないと言われ、平成18年度病院会計決算で、44億を不良債務として赤字決算処理をする。しかし、病院独自では不良債務を減らす事は出来ず、44億円をいっぺんに処理することも出来ないので、一般会計からとなるが、いままでの毎年の繰出金にプラスアルファをして、何年かに渡って返済していく方法を試算している。
平成5年から平成11年度まで44億円を貸付金として処理してきた。本来、繰出すれば良いのに貸付をした。病院はろくでもない息子だから経営改善は望めないし、親からの依存は好ましくない。新病院建設の起債では、道は赤字があっても協議に応じるとしているが、この点を一番危惧している。
問題なのは、現在の実質公債費比率19.2%を、7年間で18%までに解消する計画を、来年2月までに総務省に提出し、今年の借金(起債)を認めてもらわなければならないことだ。このための試算を進めている」(市財政部長)と、切迫する危機の対応に追われている。