幻の魚「いとう」の人工受精に挑戦!小樽海洋少年団! 


 小樽海洋少年団の「感動体験 いとうの人工受精」が、5月14日(日)10:00から、平野井「いとう」養魚場(桜5)で行われた。参加した23名の団員たちは、幻の魚いとうの採卵や受精までを実際に手で触れて行う初の貴重な体験をした。
 いとうは、サケ科の中でも最大級の魚で全長約1mを超すものもある。サケ科の中では、ただ一種春に産卵し、色鮮やかなオレンジ色の卵を産む。本州では絶滅し、道内では後志や宗谷、釧路などに分布するが、道内河川環境の悪化で生息数が激減しており、その自然の姿を目にすることが難しいことからも、幻の魚とされている。最近、国際自然保護連合のレッドリストで、最上位の「絶滅危惧種1A類」に登録され、その保護対策が必要とされている。
 小樽海洋少年団の平野井篤事務局長(69)は 「普段体験することができない、魚の採卵と受精の貴重な体験を子供たちにしてもらって、自然界の真実を伝えたい」 と、自宅に設置している養魚場で、人工受精の実習を行った。
 平野井さんは、船乗りだったが陸に戻り、小樽水産高校に勤務し 「自然の命を絶やすことで、人間は生きていける。魚に対して申し訳ない」 と、北大水産学部の協力で1990(平成2)年4月から同校に、淡水魚の「ウォッチング・パーク」を作った。「いとうの養魚が一番難しいからこそ魅力を感じた」 と、いとうの研究を始めた。
 同校での研究は、いとうはふ化はするが稚魚までには至らなかった。しかし、自宅の養魚場の研究で、水温の変化が重要なことが分かった。学校では、水温は一定のままだったが、養魚場では2℃から20℃までの水温変化があり、いとうの養魚には、水温変化の調節が大事だということが理解できた。 これにより、昨年は、4,000粒の卵を採卵し、このうち3,000粒がふ化する大成功を収めた。ふ化した稚魚は、おたる水族館や小樽水産高校に半分ずつ譲り、このうち、約30匹は平野井さんが飼育している。
  14日(日)は、海洋少年団23名が、いとうの採卵と受精を経験。採卵時には、団員一人一人が順番に、いとうの体の中にある卵を押し出していく貴重な体験を行った。団員の長谷川勇斗(8)くんは 「楽しかった。お腹を押して、卵がいっぱい出たのがおもしろかった」。阿部圭秀(8)くんは 「卵が出るところが楽しかった。ドキドキした」。菊池立樹(9)くんは 「軍手がヌルヌルになったけど、うろこが付かなかったことに驚いた」。田中亮圭(10)くんは 「怖くなかったよ。すごく良い思い出になった」 と感動していた。
 子供たちは、幻の魚いとうの中でも幻の幻と言われ、平野井さんが北大から手に入れた金色に輝く珍しいいとうを手にし、自分たちの採卵受精から、この金色のいとうが生まれるかに関心を寄せていた。
 この日、採卵した卵は、メス3匹からの約3,000粒。ふ化までは、水温10℃で35日かかるが、海洋少年団は、以後1年間、このいとうの飼育観察をしていくという。