小樽市議会は、8日(月)の建設常任委員会に続き、9日(火)13:00から、市立病院調査特別委員会(前田清貴委員長)を開会した。この2日間の委員会で、残りの任期1年を切った山田市政の公約だった新病院建設の概要が明らかになった。
当初予定していた小学校の統廃合による量徳小の用地が、市民の反対で不可能となり、山田勝麿市長は、急遽、小樽築港のJR用地へと大きく舵を取った。
築港地区での新病院建設は、築港114番所在のJR用地。敷地面積19,147.41平米、地上8階建、延べ面積約35,000平米、建築面積約7,500平米、病床数493床、350台収容の駐車場を備えたものとなる。
新病院建設のための建設費及び土地購入費合わせて199億7,000万円で、借金による起債額は197億円、利息を含めると総額271億円の巨額費用がかかり、この借金の返済には34年間かかるとしている。
現在、小樽市は約1,300億円の巨額借金に追われ、財政危機の真っ最中で、今回の新病院の建設による借金が、さらに上乗せされることになり、借金総額はさらに膨らみ、巨額借金が市民の肩に重くのしかかることになる。
築港地区での新病院建設には、同地区での再開発地区計画の変更手続きが必要となる。このため「多目的交流・商業地区」から「医療・福祉関連サービス業務地区」へと、「読み変え」による強引な手法が取られることになる。
都市計画法上の手続きの他に新病院建設に伴う医師の確保や病院収支の問題など、クリアすべき課題も多い。質疑では各委員からも様々な疑問符が投げ掛けられた。
「小樽病院の小児科・産婦人科の現在の状況では、市民の不安は大きい。夜間、喘息の発作に対応してもらえず、札幌まで行かざるをえなかった。今後の医師確保はどのようにするのか」(共産・菊池葉子委員)
「病院の患者動向は、平成13年まで右肩上がりで、以降右肩下がりとなっている。下げ止まりは見えてこない、いっそう患者の減少率が加速すると見るが、新病院を建てれば医者が来ると言っていたがどうか」(共産・古沢勝則委員)
「建設地は築港になったが、量徳小は5万人の署名運動で撤回した。6万から7万の署名運動で反対したら考え直すことはあるか」(自民・井川浩子委員)
「病院は待ったなし、急がなければいけない。医者が来ないのは老朽化の問題であり、婦人科・小児科の問題もあり、後戻りすることはないと思っている」(山田市長)
「建設費の197億円は高い。民間なら半分で出来ると言っているが適切額か。利息を含め、271億円はかなりの市民負担になる」(自民・小前真智子委員)
「この築港地区しか無くなったので、この地域をきちっとした街並みを作ってもらいたい。医者がいなくなると患者もいなくなるので、基幹病院として良い病院を作って欲しい」(自民・成田晃司委員)
「ようやく具体的な資料が出た。市長がGOサインを出したと受け取っていいのか」(公明・高橋克幸委員)
「他に土地が無いからここに建てるのでなく、築港地区に建てる根拠を示して欲しい。市民が疑問を持っても、解消出来るイメージをきちっと出せる作業をやって頂きたい。私は必ずしも賛同は出来ない」(平成会・上野正之委員)
「場所と規模についても市民から色々な意見が出ているので、もっと検討してもいいのではないか。44億円ある長期借入金は、返済すると言っているが不可能だと思う。銀行に借入をする時は良いことを言うが、まさしくこれがそうだ。資金収支が絵に描いた餅にならないように望む」(平成会・ 大畠護委員)
「築港に新病院を建てることで、病院の中身はどういうものを建てていくのか。小児科医がいなくなり、分娩をやめるという産科の休止は、どういう議論をして決定したのか。看護学院は新病院に併設せず、堺小跡に作るというが、その位置付けはどうなっているのか」(民主市民・ 斉藤博行委員)
各委員からも様々な疑問符が投げかけられたが、市側は市長のGOサインのもと、巨額借金での新病院建設に邁進する姿勢だ。新病院建設予定地の築港地区には、市が推進して建設した巨大商業施設がある。旧マイカルの破綻で空き店舗が目立ち、固定資産税も滞納しているこの巨大箱物の隣に、今度は新病院の箱物が、中身の議論が十分になされないまま、建設スケジュールだけが進んでいく。
任期1年を切った山田市政が、次期市政を縛る重要施策を置き土産にするのではなく、次期市政へ委ねるべきだとの声も上がる。この意味から、2期目の最終年を迎えた山田市長の執念の新病院建設推進は、3期目への実質的な”出馬表明”ではないかとも見られる。
築港地区には、マイカル建設の新谷市政と新病院建設の山田市政の巨大箱物が建ち並ぶことになる。結果的には、2代にわたる小樽市政の”失政”により、築港地区が墓場化してしまうのではないかと、危惧を抱く市民も少なくない。このため、新病院建設に対する小樽市民の今後の動向が極めて注目されるものとなった。
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