小樽観光名所の一等地に建設中の「洋服の青山」の新店舗が、さまざまな波紋を呼び、開会中の市議会予算特別委員会でも、その景観をめぐって論議された。
小樽に来る観光客が必ず訪れる小樽運河の浅草橋街園は、小樽運河を背景に記念写真を撮る小樽観光のメッカで、いつも観光客で賑わっている。現在、この向かいに紳士服販売大手・青山商事(広島県福山市)の新店舗が建設中で、鉄骨が組み上がってきている。
この場所には、2005(平成17)年9月まで、小樽ビールパーキングのどす黒い2基のパーキングタワーが聳え立っていた。駐車場の他、土産物やビール・ソフトクリームなどを販売していたが、採算性が取れなくなり営業存続は難しいとして売却され、青山商事が購入した。
建設中の新店舗は、「洋服の青山」長橋店を移転し、今春に開業するとしている。同社では「移転は長橋店契約の終了などが理由だ」(広報室)とし、昨年12月から建設工事に取り掛かっていた。
この「洋服の青山」の新店舗は、昨年4月にオープンした札幌の石屋製菓(株)が運営する、屋台村「出抜小路」に隣接している。このため建ち上がってきた建物で、「出抜小路」のシンボルの「火の見やぐら」の一方の眺望が遮られてしまった。しかも隣地境界すれすれに建てられているため、周辺の店からも不満が続出した。
現在、開会中の小樽市議会第1定例会の10日(金)に行われた予算特別委員会でも、平成会の上野正之議員と民主市民連合の山口保議員から、「なんで隣に建っている出抜小路の火の見やぐらを隠すように建っているのか。嫌がらせとしか考えられない。隣の景観に配慮すべきなのでは」、「小樽運河沿いになんで洋服の青山なのか」と、小樽市が目指す観光都市への対応が追及された。
市では、建物の高さも抑えてもらい、色彩も小樽らしいレンガや軟石の色に変えてもらったという。しかし、観光名所の小樽運河沿いの一等地に「洋服の青山」では、観光都市の名も泣こうというもので、市議会での論議となった。
しかし、屋台村「出抜小路」は、市の登録歴史的建造物の銀行協会ビルを取り壊して造られたもので、その派手な作りが、従来の落ち着いたかつての街並みを壊してしまったとの指摘がされている。この隣地に立つ青山の建物も物販店特有の単純な作りとなっており、2棟のちぐはぐな建物が並ぶ小樽観光の一等地が、市の景観条例で「特別景観形成地区」に指定されているという、笑えぬ皮肉な結果となっている。
小樽の先人たちが築いた文化度の高い建物や、それが織り成していた小樽の景観。市外から新しく参入する業者たちに、後世に残せる建物や景観の構築を期待するのは無理というものか。その規制もまちづくりへの指針も示さず、後追いの規制でお茶を濁す小樽市行政の対応が厳しく問われている。
イタリアの古都フィレンチェ市では、観光の一等地の玄関口が、小樽のように無様な姿になることは、絶対にありえない。同市では、街の景観を守るため、厳しい規制と指針が機能しており、看板ひとつ出すのも、そのデザインも厳しく制限され、観光都市づくりに官民一体の取り組みが不断に行われている。これを小樽市の官民に望むのは到底無理というものか。
◎関連記事