小樽港北防波堤の「平成の大改修」が本格化!

 秋の小樽港北防波堤に、毎日のように大型クレーン(起重機)船が横着けされている。建設から100年以上を経過して老朽化が進んだ、北防波堤を本格的に修復する「平成の大改修」が、10月に入り急ピッチで進められている。
 小樽港北防波堤は、近代土木の父といわれる廣井勇博士(初代小樽築港事務所長)の陣頭指揮により、1897(明治30)年から11年間をかけ1908(明治41)年に完成した。コンクリートブロックを斜めに積み上げた斜塊構造は、当時の土木技術の最先端をいくもので、歴史的価値が極めて高い。2000(平成12)年には土木学会の「土木遺産」に、2001(平成13)年には「小樽みなとと防波堤」として「北海道遺産」に指定された。
 延長1,289mの北防波堤も現役一世紀に及び、北の海の激しい荒波に揉まれ、老朽化による傷みが目立つようになってきた。このため、小樽開発建設部では、北防波堤の改修改良工事を7月下旬から着工していた。
 残されている完成当時の報告資料「小樽築港工事報文(前編・後編)」を検証しながら、7月下旬から、施設現況調査(マルチビーム)や潜水調査が始まった。これにより、北防波堤斜塊部を支え、波の衝突力を弱める「捨塊」と呼ばれる、コンクリートのブロックが飛散・散乱し、波の勢いで削られ、重量も減っていることが分かった。そのため、機能が低下し、本体に影響を及ぼすとされる「捨塊」を、再設置により回復を図り、改良された新しいコンクリートのブロック「方塊」約30トンを18個据え付ける作業が、10月4日から13日まで行われた。
 10月20日(木)には、その「方塊」を支える機能を持つ「被覆ブロック」の据付作業が行われていた。以前は、大割石、中割石と呼ばれた、300kg~1,000kgの石が使用されていたが、安定性を強化するため、新たに開発された6トンの「被覆ブロック」が使用されている。以前の石とはまるで違った形になっている。この「被覆ブロック」を19日から22日の間で、160個を据え付ける予定。250トン吊り起重機船で「被覆ブロック」を吊り上げ、海中に沈ませ、2人の潜水士により位置を固定する。
 小樽港北防波堤の「平成の大改修」の工事現場には、船でしか近づけない。このため、本社では、小樽開発建設部・小樽港湾事務所の協力により、10月20日(木)13:00から、現場取材を行った。快晴の秋空の下、クレーン船から次々とコンクリートのブロックが起重機で吊り上げられ、海中に沈められていた。 動 画
 この日は天気も良く、作業は順調に進んでいた。この工事は、天候に左右され、シケた時は作業を断念せざるをえない。しかし、今年度の工事の目標である、港外側の斜塊部及び斜面捨石部の施行は、予定通り進められているという。10月末までこの「方塊」を据え付ける作業を行うとしているが、季節の変化、波の状態などで、漁などへの影響もあるため、作業がどこまで進むかは天候次第という。「みんなで協力し、地域の人たちの理解を得て、作業していきたい」(志賀保副所長)。作業は11月末をメドに行われ、冬期間は中断する。
 改良予定区間は、北防波堤斜塊部の860mに及び、今年度はこのうちの約50mについての工事となる。延長1,289mの北防波堤の約67%に及ぶ、860mの「平成の大改修」がいよいよ本格化した。
 今年度の工事費は1億6,200万円、「北防波堤は、明治30年に工事が開始され、11年を経て完成した。今回の改修改良も11年という期間でやっていきたい。歴史的な工事になるので、我々の後輩が同じような工事をすることになった場合に、今回の工事の資料を『小樽築港工事報文』のようにしっかり残していきたい」(三原一憲・小樽開発建設部築港課長)と、「平成の大改修」に力が入り始めた。

 小樽開発建設部HP