開業以来115年という一世紀を超える長い間、小樽人から「丸井さん」と呼ばれ親しまれた、老舗百貨店丸井今井小樽店が、10月23日(日)に閉店を迎えた。
閉店日となった23日(日)、閉店前から買物客やテレビ 新聞など各社の報道陣が集まり、小樽店一世紀の幕引きの模様に大きな関心が寄せられていた。
小樽店は、1891(明治24)年創業の古い歴史を持ち、小樽市民には、丸井今井ブランドとして115年に渉り親しまれてきた。しかし、親会社の丸井今井の経営危機から不採算店として、小樽店は10月23日の閉店が決定していた。急遽決まった小樽店の撤退に対し、市や商工会議所、周辺商店街などが、営業存続の署名運動を展開し、丸井今井本社に閉店の延期を求める要望などの「直訴」を行っていた。
しかし、本社の分割での会社存続を目指す丸井今井側は、小樽市の関係者による「直訴」などを一顧だにせず門前払いで、閉店へとまっしぐらに進んだ。9月23日から閉店日の10月23日までの1ヶ月間は、閉店セールとして最後の営業を続けていた。
丸井今井小樽店の入っている現在のビルは、1990年のバブル期に丸井今井主導で市街地再開発事業として、約130億円をかけて造られた。百貨店やホテルが入り、約4万3,600平方メートルもある大型ファッションビル。丸井今井小樽店の閉鎖で、このうちの約60%が空きスペースとなる。同ビルを管理する小樽開発(株)の筆頭株主は丸井今井で、小樽店の閉鎖で同社には約40億円の借金が残された。
空きスペースとなる広大な売場を埋める後続のテナント探しが始まっているが、先行きの見通しはまったく立たず真っ暗闇の状態で、空きスペースが幽霊スペースとして残されることになる。しかし、同店にテナントとして出店していた地権者などは地下1階と1階部分に集約し、薬局・精肉・時計・メガネ・婦人服・雑貨などの約20店が集まり、暫定営業をすることにしている。しかし、この暫定営業店でも、地下1階・1階の半分程度の面積しか埋まらず、今後に課題を残している。
閉店日となった10月23日は、最後の閉店セールで、1階には客の姿が見られたものの、2階から7階にかけては客の姿もまばらで、淋しさを醸し出していた。
玄関ドアに貼り出されていた「開業以来115年のご愛顧、誠にありがとうございました」との閉店挨拶文も、一世紀の幕を閉じる侘しさを演出していた。玄関で来店者に挨拶していた同店OBの石井幸二さん(73)は、「12年前に定年退職した。37、8年丸井と共にしたから、本当に名残惜しい。当時の丸井は良かった。お客さんの顔を見るだけで涙が出てきます。だから最後に『ありがとうございました』と感謝を伝えに来ました」と、閉店に感無量の様子だった。
中田鈴子さん(75)は、「病院の帰りに必ず来ていた。本当に寂しいわ。今日は丸井さんのカードを解約し、お別れしに来たの」と、目にうっすらと涙を浮かべていた。
2005年10月23日19:00。丸井今井小樽店の閉店は、一世紀に渉った小樽経済のシンボルを失うことを示しており、衰退を続ける小樽経済がさらに退潮する象徴的な出来事として、小樽の歴史の1ページに刻まれることになった。