北海道指定有形文化財の五百羅漢の寺として知られる宗円寺(潮見台1)が、違法建築として使用禁止とされていたが、昨年11月に改築工事が終了し、今春4月から6年にわたって眠り続けていた五百羅漢が、深い眠りから目覚め、晴れて復活オープンすることになった。
曹洞宗月浦山宗円寺(荻野徹嚴住職)は、潮見台の高台に位置し、室町時代から江戸時代にかけて作られた515体の木造の羅漢像を収蔵している寺として名高い。
同寺では、1999年2月の大雪で、旧本堂の屋根が損壊し、羅漢像も影響を受けた。羅漢像を修復し収蔵するために、新本堂の建築を同年夏から取りかかった。
新本堂は、木造一部鉄筋コンクリート造2階建、延面積529.98平方メートルの大木を使用した寺院建築。福井県の寺社建築を手掛ける業者と大工を呼び、建設にかかった。1999年12月に、旧本堂とは全く異なった趣の新本堂が竣工した。屋根の一部や内装が未完成だったが、大雪に備えて、ご本尊の丈六釈迦如来坐像と五百羅漢像を還座させ、2000年8月に新本堂落慶法要を行った。
ところが新築の本堂は、建築基準法に違反している箇所があると判明し、市の検査済証の交付を受けないまま4年が経過した。市は、この違法状態が続いた間は、観光客など来訪者に不測の事態の発生することを恐れ、市の観光資料やホームページから、同寺を工事中として削除するなどの措置を取っていた。
違法状態の解消のため、市も再三寺側と話し合いを行ったが、住職の入退院の重なりもあり、この違法状態が4年にわたって続いていた。
しかし、宗円寺はこの異常な状況を解消するために、700万円をかけ改築工事を行った結果、2004年11月にようやくこの状態が解消され、建築基準法の検査済証が交付され、晴れて違法状態が全面的に解消された。
旧本堂の屋根の損壊と違反建築で、五百羅漢は一般公開されず“幻の文化財”として、6年間にわたり深い眠りについていた。
違法状態が解消し、1月20日に荻野住職は、山田市長を訪ね、今春の復活再開について報告。市長もこれを受け、全面的協力を約束した。
これにより、市と寺との間で4年間にわたって争われていた難問も解決し、新たな観光資源として、再び脚光を浴びることになった。
山田勝麿市長は、「以前には宗円寺には多くの人が訪れていた。建築違反問題が、昨年ついに全面的にクリアしたことで、市としても五百羅漢は貴重な文化財の観光資源でもあり、おおいにPRして観光客が大勢訪れるように力を尽くしたい」と、再び観光スポットとして活用出来ることに、ほっと一息の様子だ。
宗円寺の荻野徹嚴住職は、「この間、色々なことがあったが、貴重な文化財を守らなければならないことを十分承知している。4月1日からの復活オープンでは、多くの観光客や市民が来訪し、五百羅漢を参拝して頂きたい。一般公開の再開で、いささかでも地域に貢献出来るよう、体制を整えていく。今春のオープンに向けての協力者が増えており、積極的に取り組んでいく」と、意欲を燃やしていた。
今春4月1日から、6年ぶりに晴れて新本堂で再登場する、釈迦と500人の弟子たちの五百羅漢像は、喜怒哀楽の様々な表情で、来訪者に語りかけることになる。
6年間の深い眠りから目覚める、幻の文化財となっていた五百羅漢像は、市と寺との争いを、喜んでいたのか、怒っていたのか、哀しんでいたのか、楽しんでいたのだろうか。