工藤 美智代ママ
国道5号線から船見坂を上り、長橋へ向かう途中にあるブック・カフェ「シオン」のママ。ママのお兄さんが丹念に作り上げた自家焙煎のコーヒーと読書時間を提供する。
ママは、仁木町の近くの然別に生まれ、小樽の幸町で育つ。昔ながらの平屋建の日本家屋に住んでいて、「私が幼い頃、少しずつ車も通るようになってきたのよ。でも、昔の幸町は何もなかったと母に言われたの」と昔に思いを馳せる。
札幌の短大に入学し、「卒業して就職して、25歳で子供を生んで幸せな生活を送る」という青写真を作り上げていたママは、まさかカフェのママになるとは思ってもみなかったという。しかし気付くと周りがあっという間に結婚していき、思い描いていた未来予想図とはかけ離れていった。
「ひとりで生きていこう」と、35歳で専門学校に入学。短大・専門学校で、色々な地方の人と知り合い、今までの価値観が変わり、それが一番の財産になったという。
不思議な縁でご主人と出会ったのがきっかけで、カフェのママになり現在に至る。小樽で珈琲工房を持つお兄さんが、新しくコーヒーを煎る機械を据える場所を探しており、「夫が店をやりたい」と現在のカフェを2年前にオープンさせ、珈琲工房焙煎室を併設した。
初めはママとご主人が仕事の休みを利用して営業していたが、「夫が言い出したのに、今では私がもともとの仕事を辞めてずっとこの店にいるんです」
コーヒーに縁がなかったママだが、「兄からコーヒーが出来るまでの話を聞いて好きになった」と、今ではコーヒー通に。
カフェの中には、コーヒー独特の煎った香ばしい香りが漂う。昔の喫茶店のように、コーヒー1杯でゆっくりしてもらいたいと、「ソファーも置きたいぐらい」と話す。コーヒーは、250円という手頃な価格からとなっている。
もともと人と話すことが好きというママは、「人の話を聞いていて楽しいし、勉強になる。趣味でやっているような店だけれど、コーヒー1杯で何時間でもいてもらい、体や心が疲れた人にゆっくりしてもらえればいいな」とやさしく微笑む。小樽港が見えるカフェで、オリジナルコーヒーとゆったりとした時間と本を提供する。