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 12月のベストマスター 2010

大久保 克哉 マスター

 「地元の人が安く食べて飲んで、ぐでんぐでんに酔っ払ってもらいたい」

 昨年、生まれ育った小樽に戻り、小樽ホルモン酒場「やみいち」(堺町2・小樽出世前広場内)を10月にオープンしたマスター(32)。

 “金が欲しい”20歳の時にそう思って札幌に出た。「駅前のパチンコ屋でアルバイトをしていたが、このままずっと進むより自分で何かをやってみたい」と、完全歩合給(フルコミッション)でブランドスーツや携帯電話販売に携わった。

 25歳になってファンドを始め、全国各地を飛び回り、忙しい日々を過ごしていたが、稼いだ金は全部ススキノに流れていった。「リーマンショックの ニュースを見て本当に恐いと思った。何があるか分からない」とファンドをやめ、今度は、パートナーとともに白いたいやき「尾長屋」のフランチャ イズ店の運営を始めた。たいやきブームの流れに乗って店舗展開を拡大させ、北海道本部も任されるほどに急成長した。

 昨年、子供が生まれたことを機に、小樽の実家に戻ってきた。10年ぶりに花園繁華街に出て飲食店をぶらりと立ち寄ったところ、「あまりの人の少なさにびっくりした。人がいないいないと言っていても10年前に小樽に住んでいたときはまだいた」と、小樽の衰退ぶりに衝撃を受けた。

 「たいやき屋で1店舗1日20万円ぐらいの売上げがあったが、ブームは去るもんだ。恐ろしい勢いで去っていった。2月のさっぽろ雪まつりのブース販売で、自分は手を引こうと思っていたので、何か小樽でやりたいなと思い始めた」

 そんな折、雪まつり会場で、千歳のホルモン屋「やみいち」のオーナーと知り合い、そのミソダレの味に惚れた。「20代の頃に全国を回って、色々な美味しい店に行っていたので、自分がうまいと思えば絶対うまいという自信があり、この店の味でホルモン屋をやろうと決め、オーナーに味を売ってくれとお願いし た」

 知人の不動産屋の紹介で、堺町通りにある小樽出世前広場のテナントスペースを紹介された。「今までの経験から2ヶ月で初期投資分を取り戻さないとアウトだと思っているので、100万円以上はかけないと決めていた。店舗には炭焼きの設備も整っていたのでやることにした」と、10月にオープン。

 「堺町通りで地元に目を向けている人は少ないと思う。だから、まずは地元の人が安く食べて飲んでもらえるようにしたい」と、メニューは230円か ら980円まで全て1,000円未満。「ビールが好きだから、これにはこだわる」と、アサヒスーパードライ中ジョッキ280円。「地元の人が何回も足を運んで、ぐでんぐでんに酔っ払ってもらえれば嬉しい」と語る。

 今後は、朝里、花園でのチェーン展開と小樽のB級グルメの開発に取り組む。「細木数子が今年11月から3年間が運気が良いと言ってるので、それを 信じる」と、優しい笑顔から強い意気込みを感じさせる。

小樽ホルモン酒場「やみいち」
小樽市堺町2-2 小樽出世前広場内
0134-22-8887
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜24:00
定休日:月曜昼

 11月のベストマスター 2010

 10月のベストマスター 2010

堺 修司 マスター

 2,000枚のレコードと数え切れないほどのCDを店内に並べる、ROCKCITYBAR「LENNON SENSE(レノン・センス)」のマスター(55)。ジョン・レノン、エルビス・プレスリー、マイケル・ジャクソン、坂本冬美、Superfly、 AKB48など、すべてのジャンルの音楽を愛し熟知している。

 小学校5年生から音楽に興味を持ち、ラジオの深夜放送や米軍の家族向けラジオ放送FEN(Far East Network)を聴いて、音楽情報を入手。中学校3年生の時にはバスに乗って、余市から小樽の玉光堂まで毎日通った。

 「当時、社長の奥さんが『レコードが欲しいのなら、3回で払っても良いよ』と言ってくれた。それで手に入れたのが、ジョージ・ハリスンの3枚組レコード。当時で5,000円だったから、中学生の自分にとっては大金。今の価値で言うと30,000円くらいになるかもしれない」と、カウンター上からそのレコード を取り出す。小学生時代から音楽漬け。

 余市高校在学中は、NHK放送コンクールで、鰊漁が栄えていた時代の人間模様を描いた文芸作品を出品、全国4位に入賞。 放送学科のある大阪の大学へ進学し、NHKの下請けの制作会社でアルバイト。朝ドラの製作現場に足しげく通った。

 卒業後、ソニー傘下のレコード会社に就職するも、上司とのソリが合わず2年半で退職。地元・余市へ戻ってきた。知人の縁で、丸井今井小樽店裏にある北海ビル隣でオープンすることになった、ダンスホール「ヒーロー」の音声を一手に担うことになった。機材やレコード集めまですべて行った。

 「マイケル・ジャクソンのオフ・ザ・ウォールのプロモーションビデオを、プロジェクターを使って流した。当時は一般家庭にビデオが普及していなく て、マイケル・ジャクソンのプロモーションビデオをディスコで流したのは俺が初めてだ」と自負する。

 1986(昭和61)年に、花園に「LENNON SENSE(レノン・センス)」をオープン。レベルの高いスピーカー・機材で、客に合った音楽を流し、至福のひと時を与えている。

 「音楽なしでは今日はなかった。音楽の出会いで人生が変わった。人との出会いで人生が変わるように、音楽も人生を変える。この店で、お客さんに合わせて曲を流 している。お客さんは、その曲を聴いていた時代に戻り涙を流す人もいる。音楽は一時でもその時間に戻らせる。今は50歳でも、10代の頃に戻れる。仕事のストレスを発散し、エネルギーを溜めて、明日の糧にしてもらえたら嬉しい」

 バーでのライブのほか市内各所でもライブイベントを行う。花園の街中で音楽イベントも計画している。「俺の仕事は、良い音楽を伝えていくこと」と、 音楽への情熱を熱く語る。

ROCKCITYBAR「LENNON SENSE(レノン・センス)」
小樽市花園3-8-12
0134-32-6954
営業時間:20:00〜02:00
定休日:日曜日(イベントの際は営業)

 9月のベストマスター 2010

金森 昭憲 マスター

 今年5月、色内大通りのカラオケスリラー前に、ハンバーガーカフェ「MajiruBlanc(マージルブラン)」をオープンしたマスター(32)。

 潮陵高校を卒業して、関西の大学へ進学し、自動車開発の企業へ入社しサラリーマンとなった。「もともと小樽に帰ってきたいという思いがあった。両親と会える距離にいることが親孝行かとも思っていた。それに、小樽の人口が減っており、若い人が札幌や東京に行ってしまい寂しいなとも感じていた」と、昨秋、生まれ育った小樽に戻ってきた。

 「仕事をしながら、転職活動が出来る器用な人間じゃないので、とりあえずノープランで帰ろうと決めた。気持ちを切り替えて自分を追い詰めた方が、良い結果が残せるので、しばらくボーっと何もしないでリラックスし、年明けに将来像を考えようと思った」

 年明けに自分探しをしていたところ、テレビで放送されたパンにクリームチーズを挟んだ商品を見て、アイスクリームを挟んだハンバーガーのアイディアが頭に浮かんだ。高校生の頃にモスバーガーで働いていた経験もあり、浮かんだメニューの試作を始めた。「食べることが好きなので、どんな味になるか食べて改良を続けた」

 完成したメニューは、ハニークリームチーズサンド(400円)。マンゴーソースと4種類のベリーソースを合わせたデザート感覚で食べられるハンバーガー。

 小樽でハンバーガーカフェをオープンしようと店舗を探していたところ、知人の紹介で、夜にバー営業する店舗を昼間だけ借りることになった。

 「この店をオープンしたからといって、小樽が盛り上がるとは考えていないが、細くても長く地元で店を営業して、本州にいる友達や小樽出身者が地元に帰ってきてくれた時に、この店に集まってくれたら嬉しい。そして、小樽にこのハンバーガーを食べたいと言って来てくれたら、その人たちが観光に回って、買い物をしてくれれば、少し経済も良くなるかなぁ」と照れ笑い。

 ハニークリームチーズサンドのほか、チーズ&チーズバーガー、ホットサルサバーガーなど5品(600〜750円)用意。すべてその日仕込んだ肉を使い、注文を受けてから、一つ一つ丁寧に作る。このため、商品を提供するまでに10分程度の時間がかかる。パンは、市内のベーカリークリハラの特注で、サクッとした食感がウリだ。

 「一人で営業している分、人件費がかからないので、頑張れば安く商品を提供出来る。小樽の人みんなに食べてもらえるように工夫している」と笑みを浮かべる。

ハンバーガーカフェ「Majiru Blanc(マージルブラン)」
小樽市色内2-10-23
090-3946-9757
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休

 8月のベストマスター 2010

森熊 真五 マスター

 小樽一の繁華街・花園の嵐山通りに、小樽では珍しい炉ばた屋「鶴吉」(花園1)をオープンしたイケメン社長(32)。

 中学3年生からスノーボードを始め、トヨタビッグエアーなどの大会では定番の競技でもある、キッカーと呼ばれる高いジャンプ台に向かって滑り降り、ジャンプしたと同時に技を数回決める、危険だが迫力あるワンメイク競技の選手に。20歳の頃には全国各地の大会に出場し、スポンサーもつく実力だったが、「本当はスノーボードで食べていきたかったが、実際にプロスノーボーダーでも、それだけで食べていける人は一握り」

 21歳の冬、背骨を圧迫骨折。リハビリしてようやく復活したと思った翌冬に、今度は衝撃だけで同じ箇所を骨折し、とうとう引退を余儀なくされた。

 引退後、次の目標を模索しながら、父親が経営する蕎麦店やラーメン店で、約10年間、調理のいろはを学んだ。今回、「株式会社システムベアー」という飲食店経営の会社を立ち上げ、花園に店をオープンした。

 何か小樽で珍しい店を作りたいと考えていたところ、小樽には居酒屋はいっぱいあるが、炉ばた焼き屋があまりないことに気づき、小樽の港に揚がった新鮮な魚を、本格的な炉ばたで焼いて出 したら良いのではと考えた。店内には、特注の畳一畳分の炉ばたを設置し、仲買人を通してその日仕入れた食材を、客の目の前で焼く。

 目標は、観光客もさることながら、地元の人に愛される店にしたい。チェーン店に負けじと、低い価格設定を心掛けている。一品200円からで、平均単価は400 円程度だ。

 「この不景気の時代には、安くて美味しいものを食べられるところにお客さんが集まる」と力が入る。

炉ばた屋「鶴吉」
小樽市花園1-8-23
0134-22-4733
営業時間:17:00〜23:00
年中無休

 7月のベストマスター 2010

 6月のベストマスター 2010

明地 規幸 マスター

 美容師を引退した叔母から譲り受けた国道5号線沿いの店舗を改装し、ヘアーサロン「Ohana」(花園3)を経営する若いマ スター(28)。

 札幌生まれの南幌育ち。小樽に引っ越してきたのは昨年1月。祖父・叔母・叔父が理・美容師。芦別町で貧しい子供たちのために無料でカットをしていた祖父の姿に憧れ、いつか自分もそうなりたいと理容師を志す。

 床屋での修業の後、「これからは、理容、美容と片方の技術だけではだめ。もっと技術を広げたい」と美容室へ。祖父に憧れてこの世界に入ったが、散髪する姿を見せられず他界してしまった。

 「両親は仕事で忙しく、じいちゃん、ばあちゃんに面倒を見てもらった。だから、将来は老人ホームを回って、施設に入っている人たちの髪を切ってあげたい」と抱負を語る。

 30年以上経った店舗は古く、外壁工事のサイディング職人である父親の仕事場で習った技術を活かし、自ら壁やカウンターを少しずつ補修。「全部きれいにしてしまうと、叔母のお客さんが来づらくなる」と、パーマ機や椅子、 カラークロスなど、叔母から譲り受けたものも大事に使いながら、少しずつ変化をつける。定休日はもっぱら改装作業に力を入れている。

 「叔母のお客さんが、いきなりこんな若造に変わってしまった店に、変わらず来てくれて本当にありがたい。自分で言うのも恥ずかしいが、じいちゃん・ばあちゃんっ子だからなのか、お客さんには『あなたのおばあちゃんだと思って』と可愛がられる」と照れ笑い。

 アットホームな店づくりを目指し、店名はハワイの言葉で“家族”の意味を持つ“Ohana”に。「小樽は穏やかで過ごしやすい。人が良い。最初は、外から来た人には厳しいと聞いていたが、買い物をしていても親切にしてくれるし、お客さんから差し入れももらえるし、人情味がある街だ」と、若く屈託無い笑顔が物語る。

ヘアーサロン「Ohana」
小樽市花園3-25-16
0134-32-3863
営業時間:09:00〜19:00
定休日:火曜日

 5月のベストマスター 2010

山下 大器 マスター

 4月18日に美容室「Hairmake U-YU」をオープンした山下大器オーナー(31)。

 生まれは根室。3歳から奈良県で育った。遊び場と言えば、両親の営む美容室 で、中学生の頃には、“自分の店を持つ”と将来を心に決めていた。

 父親から「高校ぐらいは出とけ」と言われていたが、高1の1学期で中退し、大阪で美容師の修業を始めた。「親に言われて高校に入ったけれど、おもろなかった」とポツリ。

 20歳になって修行の場を東京に移した。新しい技術や情報が集まる場所で、さらに腕を磨いた。資生堂の養成講座を卒業し、ヘア・メイク・ファッションのトータルビューティーアドバイザーの資格を取得。美容専門誌のモデルのヘアスタイルを担当する。

 3年後、親から実家を手伝って欲しいと連絡が入り帰省。店をサポートしなが ら、様々なコンテストに出場した。 2008年には、美容メーカーのWELLA(ウェ ラ)のヘアデザインコンテストでファイナリスト進出。2009年にはフォトコン テスト入賞などの成績を収めた。

 父親が美容室を閉め、エコ商品を開発する事業に乗り出すことになり、 子供の頃からの目標であった自分の店のオープンを決めた。大阪で知り合い結婚した妻が札幌出身だったことから、「北海道には何か縁があるので、北海道で店を開きたい」と海を渡った。

 札幌や小樽などの物件を探し歩いていたところ、知人から、JR小樽駅前のサンビ ルスクエア隣にある古い石造り倉庫を紹介され、「小樽の雰囲気は奈良に似ていて、石造り倉庫の建物が魅力的だった」と、ここ小樽に決めた。

 倉庫を半分解体し駐車場を作り、残り半分の店内をアンティーク調の鏡 やソファ、シャンデリアランプで装飾した。「地方でもオシャレをしたいという人のお手伝いが出来ればええなぁ」と、新しいデザインを提案し、いつもと違う自分を表現する手助けに力を入れる。

 「今は子供が小さいこともあり、妻の実家が近い札幌に住んでいるが、良いところが見つかったら小樽に住みたいと思っている。だけど、小樽は家賃が高すぎる」と苦笑い。

 「小樽で仕事をしてみると、観光地と街の落差があり過ぎて驚いた。小樽市民が住んでいる場所も観光地のように盛り上げたいと思った。神社の祭りや街のイベ ントにも参加していきたい」

 近く美容室隣に1,000円理容室もオープンする。「駐車場もあるので、ご家族で来店してもらいたい」 Hairmake U-YU

Hairmake U-YU
小樽市稲穂3-8-17
0134-64-1801
営業時間:10:00〜19:00
定休日:火曜日・第3月曜日

 4月のベストマスター 2010

前田 寿樹 マスター

 小樽の繁華街・花園で「Food-Bar きかんぼ」を経営する。ハンチングと口ひげがトレードマークのマスター(48)。

 釧路市出身。21歳の時に、釧路の飲み屋街・末広町で、「1日4,000円であなたもお店のオーナーになれる」の看板に惹かれ、デパート従業員を辞め、バーをオープン。カウンターだけの小さな店だったが、一気に繁盛した。

 バブル全盛期ということもあり、スナック、喫茶店、居酒屋、パブなど、次々に店をオープンし、多い時で8店舗を経営するオーナーになった。「本当に稼いだ。でもその分使った」

 大儲けしたが、車や家、海外旅行など道楽に使い、その時稼いだ金は今は無い。 「あっ、女の子にも使った」とボソっとつぶやく。

 バブル以降、店を整理し、帯広や十勝で居酒屋を経営。10年前に小樽に移り住んだ。クラシックカメラやブリキの玩具など、とにかく古いものが好き。この延長で、古い街並みのある小樽にベタ惚れした。

 「夜の商売の厳しさも知っていたので、花園の状況を見て、こんなところでやろうとは思わなかった。昼に肉体労働をしていたが、体にはきつく、そんな時に、義理のお母さんが持っているこの店舗が空き、また夜の仕事をすることになった」

 「こんな時代だから、価格設定を安くして、店に何回も足を運んでもらえるようにしたかった」と、ドリンクメニューはほぼ500円、焼酎ボトルも2,000 円から。フードメニューも、愛妻・かおりさんの手作りですべて1,000円未満。店前に価格表を出して安さをアピールする。

 店内には、趣味で集めたアンティークをずらりと並べる。「うちの店はチャージ1,000円なので、3杯飲んだら、1時間もしないうちにすぐに2,500円になってしまう。2,500円払ってもらうなら、たっぷり飲んでゆっくりしてもらいたいので、2,500円で飲み放題をしている。2人からだから若い人にはおすすめ。みんなに安いねと言われるけど、気軽に回数を来てもらった方がいいでしょ」と、白い歯を見せる。Food-Bar きかんぼblog

Food-Bar きかんぼ
小樽市花園1-11-18
0134-27-5815
営業時間:20:00〜
定休日:木曜日

 3月のベストマスター 2010

氏家 晃嗣 マスター

 「こんなに安くて大丈夫かとお客さんに言われるけど、地元の人が気軽に来れる寿司屋にしたいのさ」。都通り商店街から一本港側にあるバス通り・稲穂大通商 店街に店を構える室蘭出身のマスター(42)。

 公務員だった父親の転勤が多く、帯広や旭川など道内各地を転々とした。「中学を卒業したらすぐに働くつもりだった。料理が好きだったので、男らしいイメー ジの寿司職人になりたかった」と、中学卒業後、市内の寿司店で修業を始めた。

 当時は、地元客で溢れ、週末は行列が出来るほどだった。夜が一番忙しく、仕事が終わるのは夜中の2時、3時が当たり前。金曜日と土曜日は、花園で飲んだ客やスナックのママが店を訪れ、朝まで働いた。自分の店を持つという夢のため、毎日寿司を握った。

 「昔はお客さんが並ぶのは当たり前だった。寿司の値段も安かったし、とにかく地元の人たちが外に出て、お金を使っていた。夜中に店が終わっても、それから車で札幌に遊びに行ったこともあったな」と思い返す。

 「あまり店がないこの場所にビビっときた」と、オフィスビルや病院が多い稲穂大通商店街に、38歳で店をオープン。客同士が架け橋になってくれればとの思いを込めて、「お箸ダイニング こうじ」と名づけた。

 一番高いおまかせ寿司が2,980円、ランチの寿司セットは880円。「観光客が小樽にたくさん来るようになってから、寿司の値段が高くなった。宣伝してまで観光客を呼ぼうとは思わない。地元のお客さんに味わってもらえれば嬉しい。風呂上りに来るお客さんもいるが、うちはそんな感じで気軽に来れる店。かしこまる必要なんてない」

 店を手伝う妻・由佳里さん(35)は、一時期住んだことのある帯広出身。これがきっかけとなり意気投合して結婚した。店内には、二人のやさしい人柄が広がる。値段を気にせず、肩を張ることもなく、和気藹々と新鮮な寿司を楽しむことが出来る。工夫を凝らした一品料理も自慢だ。

お箸ダイニング こうじ
小樽市稲穂2-13-17
0134-22-7070
営業時間:11:30〜14:00、17:00〜22:00(オーダーストップ)
定休日:日曜日(連休やイベント時は営業)

 2月のベストマスター 2010

木村 千里 マスター

 碾き立て・打ち立て・茹で立ての蕎麦を作る「手打ち蕎麦 きむら」の店主(52)。「市内には美味しいお蕎麦屋さんがいっぱいあるが、色々食べ歩いても、今日はここの蕎麦食べたいねと言われるようになりたい」と話す。

 幸会館前のバス停から、ほんの数メートルオタモイ側に歩いて左に曲がると、目の前の住宅街の一角に緑の旗が目に入る。外観は普通の住宅だが、居間と寝室を改装した店内へ入ると、蕎麦の香りがほんのり漂う。玄関で靴を脱いで、暖簾をくぐると、“いらっしゃい”と、夫婦の温かい声が聞こえてくる。親戚か友人の家に遊びに来たような、アットホームな雰囲気が広がる。

 調理学校卒業後、30年以上調理人を続けた。「市内の病院で調理師として働いてきたが、3年前から栄養部が外部委託される話が上がり、業者に勤めるか悩んだ時、女房から“勤めたってどうせブツブツ文句言うんだから”と言われ、自分で店をやることを考えた。蕎麦が好きだから、手打ち蕎麦を習い始めた」

 一昨年に退職してから、市内の店舗を探し歩いた。街中では、家賃が十数万、駐車場が車1台1万円程の経費がかかり、お客さんが来てくれても、忙しければ人を使うことになり、余計にお金がかかると思った。ちょうどこの場所に家があったので、退職金を使って、1階を改装して昨年4月にオープンした。

 農家から直接蕎麦の実“キタワセ”を仕入れ、毎朝、電動石臼と手碾きで自家製粉する。蕎麦の8割が電動石臼で、2割が手碾き。蕎麦を口に入れると、蕎麦の実の歯ごたえを感じ、口の中に風味が広がる。

 「知り合いの蕎麦店主から、色々な打ち方があるから楽しめと言われたので、それを受けて、試行錯誤した。碾き立て・打ち立て・茹で立ての蕎麦の基本の三立てが一番美味しいので、毎朝、手碾きした蕎麦を打ってお客さんに出している」

 調理学校で知り合った姉さん女房の冨美子さん(54)と2人で、静かな住宅街で店を切り盛りする。「お客さんには、もうちょっと近ければと言われるが、家がここにあったのだから仕方ない」と話す。「少し高くても美味しければ食べに来てもらえると思っている。高いと言っても、メニューは1,000円以下です」

手打ち蕎麦 きむら
小樽市幸3-16-8
0134-29-0262
営業時間:11:30〜15:00(蕎麦が売切れ次第閉店)
定休日:月曜日・第3火曜日(祝日の場合は翌日)

 1月のベストマスター 2010

阿部広史&古澤貴成 マスター

 「この不景気を乗り越えて、ピンチをチャンスに変えたい」。花園飲食街の”宵待ち通り”にある澤田ビル1階のバー「Fits(フィッツ)」の2人のマスター。

 奥沢出身の阿部さんと石山町出身の古澤さんの2人は、小学生から始めたサッカーが縁で知り合った。大会で顔を合わせる程度だったが、高校3年生の時に共通の友人を通して親しくなった。社会人になってからは、バイクという共通の趣味を通じて、毎晩飲み歩くほど仲良くなった。「遊ぶと言えば飲んでたな」

 昼間は、阿部さんが配送業、古澤さんが美容師と、別々の職業を持つ。水商売の経験のない2人だが、「以前から店を始めたいと話をしていた。2ヶ月くらい前に、いつものように飲みながら話していた時に、自分たちのカラーが出せるような店を本当にやろうと決めて、一気に準備を進めいていった」

 内装を木目調の落ち着いた雰囲気に仕上げ、アジアンテイストのアイテムを飾る。「店名は最後まで決まらなかったが、僕達は24歳でまだ若いし、分からないことが多いけれど、色々なお客さんに合わせられるように“Fits”とつけた」

 14席(カウンター6席)の小さな店内に、客と彼ら二人の笑い声がこだまする。「自分たちは金がなかったので、いつも少しのお金で飲み歩いていた。だから色々な人たちに気軽に来てもらえるような店にしたい」と明瞭会計を目指す。ビール450円・カクテル400円・焼酎ボトル1,800円。飲み放題・男性2,500円、女性2,000円。

 「小樽が好きだし、自分たちが生まれ育った街で勝負をしたくなったがしたい」と意気込む。中学・高校時代はちょっとヤンチャだった二人。「おかげで先輩から後輩まで、たくさんの仲間たちが、店をオープンしたことを聞きつけて立ち寄ってくれる」

 阿部さんは8年、古澤さんはほんの数ヶ月ほどで伸ばした長いあご鬚が特徴的な2人。服の下にアームレスリングで鍛えた筋肉隆々の太い腕を隠す阿部さんは、穏やかな口調でその場を和ませ、アジアンテイストの服装を着こなす古澤さんは、得意の漫画談義で会話を弾ませる。

 24歳の青年二人が、不景気の荒波に負けじと、今、小樽の繁華街で歩みを始めた。

Fits(フィッツ)
小樽市花園1-11-16
0134-22-5992
営業時間:19:00〜お客さんが帰るまで
定休日:なし