生物名から読み解く名前の由来!博物館企画展


 GW初日の4月29日(金)から、小樽市総合博物館(手宮1・石川直章館長)で、生物名から読み解く人と自然の物語「名前の博物誌」が、同館2階企画展示室で始まった。
 同館所蔵の身近な動植物の標本を用いて、名前の由来や今年の干支申、ギリシャ神話、人名・地名にちなんだ名前約60点を紹介している。
 担当した山本亜生学芸員が、日々の研究の中で、様々な生き物を扱い、生き物の名前は面白く、どうしてこの名前が付いているのか、名前にまつわるエピソードを知ると、その生き物が違って見えることから、この企画展が開かれた。
museum-name1.jpg 会場では、動植物の一般的に知られている和名と合わせ、世界中で通じる学名を紹介。聞き馴れない学名ではあるが、名前の由来や意味、エピソードから生物をより知ることができる。
 例えば、和名の「エゾタヌキ」は、学名では「ニクテレウテス・プロキオノイデス・アルブス」と言い、「夜の狩人」と呼ばれ、タヌキの習性である夜行性を示しているのが、学名から読み解くことができる。
 今年の干支「申」にちなむ名前は身近にあり、小樽でも見かける野草「サルメンエビネ」は、花が赤く猿の顔に似ているためだ。また、小樽の海にも生息する「サルアワビ」も身の部分が赤い貝で、野鳥の「ベニマシコ(紅猿子)」の「猿子」は、赤い色をした鳥を意味する古い言葉から名付たことが分かる。
 面白い名前の由来で、早春の花「カタクリ」の花は、傾いたカゴに似ているため。「ハウチカエデ」の葉は、カエルの手に似ているため。
 ギリシャ神話の登場人物の名前も多く用いられ、「ヨモギ」の学名は、女神アルテミスにちなみ「アルテミシア・モンタナ」と付けられた。ヨモギは、婦人病に効く薬草から女性の守り神の名が付けられた。
 変な?名前シリーズでは、「ヘクソカズラ(屁屎葛)」、トゲがないことから「トゲナシトゲトゲ」や、18文字もある「アマミクロホシテントウゴミムシダマシ」。

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 小樽にちなんだ名前は少なく、その中で、小樽をはじめ全国的に分布する「オタルスゲ(小樽菅)」の学名は、「カレックス・オタルエンシス」で、1891年、フランスの宣教師が小樽で採集した植物をフランスに送り標本に基づいて命名したため、学名に「オタル」が付いた稀な例。
 忍路で発見された「オショロソウ」は、「バシクルモン」とも呼ばれ、アイヌ語でカラスの草を意味する。
 学者の間違いから付けられた例として、「コマドリ」の学名は「エリタクス・アカヒゲ」で、コマドリとよく似たアカヒゲの入れ違いによるもの。「ウミスズメ」を「ウミズスメ」となったり、オランダの鳥類学者による間違いだ。
 このように、生物の名前にまつわる物語や名前の背景を知ることにより、生物への親しみが湧いてくるユニークな企画展だ。
 山本学芸員は、「名前の意味を知るとその生き物の違った一面が分かり、名前にまつわるいろいろな人の物語はすごく面白いので、知ってもらいたい」と話した。
 生物名から読み解く人の自然の物語「名前の博物誌」
 4月29日(金)〜7月3日(日)9:30〜17:00
 小樽市総合博物館(手宮1)企画展示室
 5月3日を除く火曜日・5月6日休館
 ギャラリートーク「生物の名付け親になるには?」5月22日(日)11:00〜12:00
 同館・企画展示室