小樽ゆかりの版画家5人が集う!美術館特別展「木版の夢」


 市立小樽美術館(色内1)特別展「木版の夢ー小樽に版画の種を蒔く」が、4月23日(土)から7月3日(日)まで、同館2階企画展示室で開催中。
 昭和の初期、版画界の重鎮として知られる棟方志功(1903ー1975)・成田玉泉(1902ー1980)・斎藤清(1907ー1997)が小樽で出会い、教え子の河野薫(1916ー1965)・金子誠治(1914ー1994)らに版画の息吹を伝えた。小樽ゆかりの版画家5人の新収蔵品6点を含む77点が会場に展示され、来館者を版画の世界へ誘った。
 5人の出会いを結びつけた成田氏は、青森県弘前市に生まれ、父の転勤で小樽へ。市内の小中学校で美術講師を務め多くの後進を育てた。河野氏も成田氏に指導を受けた1人。
mokuhanga.jpg 友人であった棟方氏を小樽に招き、小樽で看板屋を営み成田氏に師事していた斎藤氏とともに、棟方氏を出迎えた。成田氏の勤務先の中学校(金子氏が通う)で講演会を開き、その後、小樽公園で子ども達と写生へ出かけている。
 金子氏は棟方氏に出会い衝撃を受け、棟方の作品を道展に出品するなど、創作版画の魅力を北海道に伝える橋渡し役を務めた。河野氏も成田氏から紹介され、棟方氏から激励の書簡を受け取るも、斎藤氏に師事する。
 小樽で出会い、それぞれが影響を受け、切磋琢磨しながら版画家の道を志すきっかけとなるなど、5人の版画家の足跡を辿る特別展となる。
 成田氏の作品は、個人蔵2点と同館新収蔵品6点を初公開した。オタモイ海岸や大通り公園。天売島の夏や丹頂、観音像など素朴な多色刷木版。
 棟方氏も青森県に生まれ、版画だけではなく、小樽出身の民俗学陶芸研究会小寺平吉夫人・貞子氏へ贈った書画や、版画の思いを集大成した言葉の「驚きも喜びの」の書、41歳の若さで亡くなった母を偲んで作った名作「悲母記」の豆本、川野氏に宛てた励ましの手紙も展示。
 河野氏は、小樽に生まれ潮見台の坂の馬そり風景や、銀鱗荘。戦争でシベリアに4年抑留され、帰国後、長女の存在に感謝し平和への祈りを込め、長女を題材に作品を発表。伝統的な木版の手法と異なる絵画的な効果を引き立て海外でも活躍する。「花の仏頭」を最後に49歳の若さでこの世を去った。
 斎藤氏は福島県会津坂下町に生まれ、夕張へ移住した後、市内で看板屋を営み、成田氏に指導を求めた。小樽の出会いが縁で上京後も交流。富士山をモチーフにした「霊峰 夕映え」や猫や寺院、故郷会津をテーマにした作品など、夕張教育委員会より出品された。
 金子氏は砂川に生まれ、小樽に移住。成田氏に指導を受け、小学校で図画専科教員となる。1938年小樽創作版画協会を設立し、小樽の丸井今井で同協会展を1度だけ開催した目録が残っている。上京するが、1942年に小樽へ戻り、北海道の木版画界を率いる存在となった。
 作品には、教員時代の子どもの様子「なわとび」「騎馬戦」など日常感じられる幸せ喜びを表現し、もっとも好きな花「ひまわり」を発表。自画・自刻・自刷の一連の作業を版画とし、後年は、木目を主役にする負担のかけない版を生み出し、代表作「トーテム」も展示している。
 同館・星田七重主幹は、「版画としては最高水準の作品が揃い、見応えがある。5人とも誰も似ていない、個性的であるが、共通の精神は、創作版画の素晴らしさを北海道にもっと浸透させたい思いがあった。その版画家達の青春期が小樽にあったことを、地元の方に知っていただきたい」と話した。
 特別展「木版の夢ー小樽に版画の種を蒔く」
 4月23日(土)〜7月3日(日)9:30〜17:00最終入場16:30)
 5月6日(金)・10日(火)〜12日(木)・月曜日休館
 市立小樽美術館(色内1)2階企画展示室
 観覧料一般600円、高校生・市内高齢者300円、中学生以下無料
 問合せ:0134-34-0035・FAX0134-32-2388 市立小樽美術館 担当:星田・旭
 関連事業
 ワークショップ「和紙でちぎり絵体験」白鳥照子氏(にじの会)
 5月5日(木・祝)10:00〜12:00 材料費300円 事前予約
 市立小樽美術館1階ミーティングルーム
 ミュージアムコンサート「琴コンサート」大林朋子氏(琴咲楽代表)
 5月21日(土)14:00〜15:00 観覧料のみ
 市立小樽美術館2階展覧会会場
 ミュージアムコンサート「懐かしい風景」札幌コダーイ合唱団 指揮:中村隆夫氏
 6月11日(土)14:00〜15:30 観覧料のみ
 市立小樽美術館2階展覧会会場
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