巧妙な細工の能面44点がずらり!第11回能面展


 小樽在住の能面作家・外沢照章氏の「第11回能面展」が、7月28日(火)から8月2日(日)まで、小樽市公会堂(花園2)地下展示場で開催している。
sotozawanoumen1.jpg 新作4点と生徒作品2点を含む44点を展示し、常設展示21点と木地仕上げ品(モデル面)も合わせると、約70点を展示。来場者は、隣接する能舞台を眺めながら、外沢氏の解説を聞き、能面に見入っていた。
 今回の見どころは、より多くの能面を展示するとともに、般若・万媚などのモデル面を多くし、来場者が直に能面に触れられ、角の付け具合や頬の曲線や額の出っ張りなど、触って体験できる。
 外沢氏は、1942年東京都生まれ。父が建具職人で、木を削る道具(刃物)が身近にあり、子どもの頃から木を削って遊んでいた。父が亡くなり、遺品の中から、生前に使用していた道具をもらい受け、42歳の時に妻に何か趣味を持つようにと言われたのをきっかけに、小さな頃から木をいじるのが好きだったこともあり、近くの能面教室に通う。15年間、能面を学び、師匠没後も能面を打ち続け、今年で31年目を迎えた。
sotozawanoumen2.jpg 平成15年に横浜から小樽へ移住。平成18年から小樽で個展を開催し、平成21年から能楽堂で開催し続けている。また、指導者としても活動し、教室を開く傍ら、市内外の小中学校などへ出向き、子ども達に能楽の普及に携わり、能面に直に触れてもらおうと体験教室を実施している。
 能面は250種類あると言われ、能面の基本形の92種類を全部作り上げることを目標に、7つのカテゴリー(翁系・鬼神系・尉系・男系・女系・怨霊系・狂言系)をまんべんなく打つことを理想とし、今回4作品が増え、現在、65種類・85点の能面を完成させた。
 古典芸能の能は、1300年くらい前に中国から日本に伝えられた。室町時代には、足利義満の保護を受けた観阿弥・世阿弥父子によって大成されたが、明治維新と第2次世界大戦で大きな危機に見舞われた。能楽師の努力で再び根強い人気を取り戻した。
 会場では、7つのカテゴリーを、入口側の翁系から順番に沿って展示されている。
 大きな目玉が特徴の「甘柘榴悪尉」(あまざくろあくじょ)。頬の膨らみや二重あご、口の開き方、クロスされた髪の毛などから妖艶さが溢れる「万媚」(まんび)は、優しく微笑み人を惹きつける魅力を沸々と感じさせる。

 また、室町時代の能面作家金剛孫次郎の代表作「孫次郎」は、若くして亡くなった妻の面影を写したと言われる伝説の面で、外沢氏が試行錯誤を重ね、7面目の作品を展示している。「山姥」(やまんば)は、山中に住む女性の妖怪で、本面の傷を細かく再現し、恐ろしさを強調した。
 本面は、江戸時代以前に作られた面で、現在は、模作中心で、名作の写しが行われ、どれだけ本面に近づけるか、使い込まれて彩色が剥がれ木肌がすり減った状態や面の傷など、巧妙な細工を施し再現している。
 能面の制作は、 ひと月がかりでモデル面を制作してから、本番に入る。本番でも1回目の失敗に注意しながらモデル面を作り、その後、日本画の彩色法で、胡粉を何度も塗り表面を滑らににしていく。膠塗りは、気温が20℃以上にならないと上手く塗れないため、北海道の気候に合わせ、5月中旬から新作を塗り始め、7月末の個展に合わせ完成させた。
 常設展示では、若女や笑尉など18面と、白式尉や黒式尉、釈迦を展示し、能面を打つ工程をパネルで紹介している。
 外沢氏は、「作品の数も増え、モデル面は触って頂くこともでき、どんな感触なのか楽しんでもらいたい。この機会に足を運んでもらいたい」と話した。
 第11回外沢照章能面展 7月28日(火)〜8月2日(日)9:00〜17:00
 小樽市公会堂(花園2)地下展示場 入場無料
 作家待機時間 10:00〜12:00、14:00〜17:00
 外沢照章・能面ギャラリー日記
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