北海道最古と思われる組立能舞台が、昨年7月に発見されてから7ヶ月、遂に、復元作業を開始した。1月27日(火)10:50から、北海道職業能力開発大学校(銭函3)1階建築科実習場(M101)で、組み立て作業を公開した。
「旧小樽昭声会(旧渡辺昭声会)組立能舞台再生プロジェクト」研究代表の旧岡崎家能舞台を生かす会・三ツ江匡弘会長は、48年ぶりの復元に向けて期待を寄せている。
2014(平成26)年7月に、三ツ江会長は、小樽市民会館(花園5)4階倉庫内で、旧小樽昭声会の組立能舞台の部材を発見した。翌8月下旬に、発見の経緯等を報告する記者会見を開き、部材を公開した。
部材は、1935(昭和10)年に製作され、3度ほど組み立てられている。小樽市の部品台帳に、「昭和59年1月26日に寄贈」と記されていた。組み立て図などの資料はなく、部材の舞台柱や舞台床板を実測し、床組を施してからその上に舞台床面を作ったと思われる階(きざはし)を3本確認。橋がかりの欄干や、現存する小樽公会堂の旧岡崎家能舞台と同程度の長さの欄干柱などから、ほぼ同サイズで天井がない能舞台と推測した。
復元へ向けて構想を練っていた三ツ江氏は、昨年10月から、北海道職業能力開発大学校で、実践的教育「都市計画」の講義の外部講師を務めるうちに、同校で組み立て作業ができないかと相談したところ、共同研究で取り組むこととなった。建物の構造や設計など建築専門分野を総合的に学ぶ同校・建築科の学生も「歴史的建造物を利用したまちづくり活動への参画」として、作業に参加してもらうこととした。
12月21日(日)に、部材を、市民会館4階倉庫から1階へ移動させ、25日(木)に同校へ搬入。今年1月9日(金)までに、すべての部材を同校へ搬入した。
能舞台の建築構造に詳しい、市内梅ヶ枝町在住の梶原建装・木工房「匠伽藍」を主宰する梶原邦雄棟梁の協力を得て、同校建築科指導員・的野博訓氏と三ツ江氏が、15日(木)・16日(金)に部材を調査し、部材に記された番号を頼りに組み立て準備を進め、23日(金)に、床板を載せる地伏(じぶく)土台と足固めができた。
27日(火)、三ツ江氏から学生に説明後、組み立て作業場となる実習場へ移動し、同校・専門課程・建築科の2年生21名が3班に分かれて、梶原棟梁の協力のもと作業を開始した。部材には「い・ろ・は・に・ほ」の文字と数字が記され、文字を頼りに組み合わせ、本舞台や後座・橋掛かりに柱や床板を組み立てた。
最後に同舞台を組み立てたのは、1967(昭和42)年とされ、ほぼ半世紀ぶりの組み立てとなった。良質な松材を使用しているとはいえ、歪みやたわみがはげしく組み合わせるのに苦労していた。
作業開始から1時間半ほどで、橋掛かりと後座、本舞台に床板が並べられ、能舞台らしい形が現れた。今後、一般公開へ向けて作業が急ピッチに進められ、2月中旬の完成を予定している。
同校・田中透副校長は、「地元の文化財の復元に関わり、公開により地域との繋がりに役立ち意義のある取り組みとなる。当校を知る機会ともなり地域と交流を深めたい」と期待を寄せている。
作業に参加した同校2年・小沢修也さんは「帯広で能舞台を見たことがあり、自分達で組み立てることになるとは驚いている。歴史的なものと聞き、後に残したいと思う。完成を楽しみにしている。一般公開では、ぜひ、多くの方々に見てもらいたい」と話した。
組み立てた能舞台は、同校で2月20日(金)・21日(土)に開催される「北海道ポリティックビジョン」で一般公開を行い、21日(土)14:30から15:30まで、同会主催「能楽体感ゼアミナール」を開催し、組立能舞台の紹介とひな飾りの音曲を行う予定。入場無料。
なお、3月1日(日)16:00から19:00まで、市民会館でも同舞台を使用して「能楽体感ゼアミナール」を開催する予定。入場無料。
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