"ロシアが見たアイヌ文化"開幕 本邦初公開140点を展示

 小樽市総合博物館本館(手宮1)では、平成25年度アイヌ工芸品展「ロシアが見たアイヌ文化–ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館のコレクションより」が、10月11日(金)から11月25日(月)までの46日間、本館2階企画展示室で開催される。
 本邦初公開となる、18世紀から20世紀にかけてロシア人によって収集された「ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館」(以下、クンストカメラ)所蔵の140点を展示。アイヌの生活文化を知る資料は、収集者や収集年、収集地が判明し、保存状態も非常に良く、日本に現存していないものも多くあり、またとない貴重な機会となっている。主催は、公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構、小樽市総合博物館。
rossiya-ainu1.jpg
 この開会式を11日(金)10:00から、同館2階研修室で行った。主催者の公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構の中村睦男理事長をはじめ、クンストカメラ・ユーリ・チストフ館長、社団法人北海道アイヌ協会の加藤忠理事長、中松義治小樽市長ら関係者80名が出席した。
 中村理事長は、「1906年日露国境画定会議が小樽で開かれるなど、日本とロシアの長い外交関係の中で、かかわりの深い町である小樽市で開催できることは、私達の大きな喜びである。所蔵するクンストカメラでは、18世紀から20世紀初めに収集されたアイヌ民族の生活文化を語る資料が多数残されており、大変貴重なもの。約140点を展示し、事前調査の中で所在が判明した幕末の絵師、平沢屏山のアイヌ絵3点を含め、すべて日本で初公開となり、大変意義のある展示となっている。多くの皆さんに足を運んでいただき、アイヌ民族の歴史と生活の一端を感じてもらいたい」と挨拶した。
 クンストカメラ・ユーリ・チストフ館長は、「独特で豊かな文化をもつこの民族の地を継承する人々を含め、多くの日本人にとって、この展覧会が有益なものであるよう祈念申し上げる。同館コレクションの展覧会が、日本とロシア両国民、博物館同士の文化学術の交流の発展に資するよう願う」と挨拶した。
rossiya-ainu2.jpg 10:40から、企画展示室入口で、来賓及び主催者9名によるテープカットが行われ開幕。同館石川直章副館長による特別観覧会が行われ、出席者は、展示物の説明に耳を傾けていた。
 クンストカメラから2名の学芸員が来樽し展示に協力した。会場は「アイヌ文化との出会い」「女の手業」「男の手業」「カムイと祈り」の4つに分類され、アイヌ民族の生活や文化を垣間見ることができる。
 ロシア人がアイヌの人たちと出合ったのは16世紀頃。千島アイヌとの出会いが最初と考えられる。海獣狩猟をし、移動生活を行う千島アイヌにとって舟は重要な移動手段。当時の舟の模型や、犬橇を使う違った文化を持つ樺太アイヌのスキーなども展示された。
 また、サハリンで採集した1890年の魚皮製の儀式用の着物は、サケ皮の女性用の着物。1着に30〜50枚もの魚皮を使用し、裾やおくみには、アザラシの皮や木綿布が縫いつけられている物や木綿製の子ども用の着物などアイヌの衣服を4点展示している。
 rossiya-ainu3.jpgガマやオヒョウ、ヤマブドウなどの植物繊維を素材とした編み袋や煙草入れ、小物入れなどを展示。植物の採集や動植物の調理、衣類やござなどの製作は、女性の仕事とされた。男性は、狩猟・漁労・食器・木製品の製作や信仰に関わる物が仕事とされ、釣具や木製の枕、中でも、1903年にサハリンで採集した玩具「鳥形玩具」や陣取りゲームのようなものも展示されている。「玩具」は日本国内には残されておらず、使用方法は不明なものが多い。
 神に祈りを捧げる時に使用する箆(へら)も多く展示し、木製で模様が彫られたものなど様々。箆の先端(さじ)に酒をつけて祈ると神へ祈りが届くとされ、必ず携帯していたという。
 調査で所在が明らかになった、2012年2月に発見された平沢屏山の3枚の絵にも注目が集まった。平沢屏山は、江戸時代末期から明治にかけてアイヌ絵を代表する絵師。日本語名称「干しアワビ造り図」「調理図」「雪中酒宴図」のアイヌ絵の傑作3点を展示している。アイヌの風俗について描かれ、大変貴重な資料。
rossiya-ainu4.jpg 北海道立近代美術館の五十嵐聡美主任学芸員は、「アイヌの生活を良く知っていなければ分らない道具などが描かれている。チセ(住居)の中での食事の仕度なども想像だけではなく、絵としても面白く、美術的に価値がある作品。雪中酒宴図では、『辰冬日吾』と書かれ、明治元年、冬10月か11月の5日を意味している」と、説明した。
 同会場では、ギャラリートークを、①10月13日②10月20日③11月17日のいずれも14:00から約45分、①と③は、札幌大学特命准教授の田村将人氏、②は、同館副館長の石川直章氏を講師に開催。
 同展の小樽終了後は、12月10日(火)から平成26年2月16日(日)まで、九州国立博物館(福岡県太宰府市)で同企画展の開催を予定している。
 ロシアが見たアイヌ文化
 ロシア科学アカデミー・ピョートル大帝記念人類学民族学博物館のコレクションより
 10月11日(金)~11月25日(月)9:30~17:00 火曜日休館(祝日に場合は翌日)
 小樽市総合博物館本館2階企画展示室(0134-33-2523)
 入館料:一般400円、高校生・市内在住の70歳以上200円、中学生以下無料・11月6日(水)より冬期料金
 小樽市総合博物館HP