町中で見られるサケの遡上 勝納川で命をかけた挑戦



 奥沢水源地から市内の奥沢・真栄・勝納地区をぬって流れ、小樽港に注ぐ勝納川で、産卵のため命をかけたサケの遡上する姿が、10月に入り多く見られるようになり、市民は橋の上や散策路から足を止めて眺めている。
 勝納川の周辺は、住宅地が広がっているが、かつては酒造元や工場が立ち並び、小樽製品の産地でもあった。住宅に囲まれた町中で、サケの遡上が見られるのは珍しく、小樽の秋の風物詩として、市民の関心も高まっている。
 南樽市場脇の真栄橋付近には、港から遡上してきたサケの群れが散見できる。サケのオスとメスが二匹で寄り添い、前途を遮る多くの石や岩、階段水路を懸命のジャンプで、乗り越えていく。急流と障害物に何度も押し返されそうになりながら、傷ついた身体で、産卵のため命をかけた挑戦を繰り返している。
 サケは、北海道・本州北部の川で産卵する。孵化してから5cmほどの大きさで川を下り、3〜5年かけて、アラスカのベーリング海まで約8,000kmもの長旅を経て、また生まれた川に溯上し産卵する。産卵期の魚は全長約70〜80cmだが、大きいもので90cmを超える。
 今年の夏は記録破りの暑さが続き、9月下旬になっても暑さが引かず、10月になってようやく少し涼しくなってきたが、小樽の町中の川では、サケの一生をかけた営みが続いている。
 それにしても、小樽の町中で見られるサケの産卵は、立派な観光資源にもなるものだが、河川管理者たちには、新しい視点から、サケの遡上を助ける魚道の整備などが望まれている。
 サケを見に来た市内の男性は「もっと行政が遡上のサケに目をやって、整備すれば良いのに。サケを上れなくしているのは、誰なんだろうね」と、首を傾げていた。