舞台を前に能面30点 第8回外沢照章能面展

 第8回外沢照章能面展が、7月10日(火)までの9:00〜17:00、小樽市公会堂(花園2・小樽市能楽堂)地下1階で開かれている。
 新作3点と生徒作品4点を含め、能面を打ち28年間の中から30点を展示。隣接する能舞台を眺めながら能面を鑑賞できる。
 外沢照章氏は、1942年東京都に生まれ。父が建具職人で、木を削る道具(刃物)が身近にあり、子どもの頃から木を削って遊んでいた。父が亡くなり、遺品の中から、生前に使用していた道具をもらい受けた。42歳の時に妻に何か趣味を持つようにと言われ、小さな頃から木をいじるのが好きだったこともあり、近くの能面教室を訪問したのが始まり。15年間、先生に教わり、同師没後13年間、能面を打ち、現在に至る。2003年に小樽に移転し、2006年から小樽で初個展を開き、2009年から公会堂で毎年個展を開催している。28年間で打った能面は70点に及ぶ。noumenten.jpg
 能面の種類は250種類と言われ、代表的な能面は92点あり、外沢氏の目標は、92点全部作り上げることで、日々努力を欠かさない。1年に3作品が限度という。現在、札幌で個人レッスンを行い、その生徒作品4点も展示している。一人立ちするまでには10年は必要と話す。
 本面は、江戸時代以前に作られた面で、現在は、模作中心で、名作の写しが行われ、どれだけ本面に近づけるか、使い込まれて彩色が剥がれ木肌がすり減った状態や面の傷などを再現している。同氏は、初作品を手掛ける時は、モデル面を作り、失敗した箇所や難所を覚えておき、本番に入るようにしている。大変手の込んだ作業となる。檜を材料とし、目がつまり収縮しずらい乾燥したものを使用。面によって厚さが違い女面の小面で7.5cm。10.5cmのものもある。それを削り、日本画の彩色法で、胡粉を25回塗り、表面を滑らかにする。膠塗りは、気温が20℃以上にならないと上手く塗れないため、5月中旬に今回の新作を塗り始めた。
 最新作の怨霊系生成(ナマナリ)は、夫に裏切られた女性の怒り、悲しみ、嫉妬、未練が入り交じった表情を示す面。鉄輪という演目で使われている。能面打ちの工程は、写真入りで詳しく説明したものを常設展示している。
 同氏は「せっかく会場に足を運んでもらったので、能面の作り方や物語の話をして、見に来て良かったと思ってもらいたい。能は、かけ離れているように思われがちだが、自分達の日常にある身近な物語である。多くの人に興味をもってもらいたい」と話した。