旧板谷邸の"防空壕"消える 解体され賃貸マンションに



 市内東雲町の眺めの良い高台にある旧板谷宮吉邸の庭の地中深くに埋まっていた、戦時中の防空壕が、11月28日(月)・29日(火)に解体撤去され、跡地には新しく賃貸マンションが建つ。
 日本の海運王として知られ、小樽市長を務めたことのある板谷商船の社長宅であった板谷宮吉邸(東雲町1)は、北海道有数の邸宅として知られていた。約5,000平方メートル(約1,500坪)の敷地に、約482平方メートル(約146坪)の和洋折衷の木造2階建。1927(昭和2)年に建てられた。木造の母屋に続き、洋館が併設されていた。
 板谷商船の終焉とともに、この邸宅は札幌の不動産業者の手に渡った。木造建物の老朽化に勝てず、同オーナーは、2010年に賃貸マンション建設に踏み切った。すでに1号棟は入居しており、現在、2号棟の建設に入っている。この賃貸マンション2号棟の建設のために、今夏、同邸宅の解体工事に入った。しかし、オーナーの好意から、歴史的建造物として指定されている表面玄関や洋館、土蔵部分は保存され、邸宅の半分が残ることになった。
 この邸の庭には、戦時中に造ったと見られる防空壕が、ひっそりと地中に埋まっていた。レンガ造りのL字型楕円形の防空壕が、28日(月)・29日(火)の撤去作業から、その姿が浮かび上がった。

 レンガを3層に重ねた重厚な造りとなっており、戦時下の緊急避難所の役割を果していた。28日に、重機で掘り起こされ、その全貌を見せたが、29日の解体作業で、またたく間に、その姿を消した。
 約70年ぶりに姿を見せた戦時防空壕の跡地には、新たに賃貸マンションが建設される。
 この撤去工事を見ていた近所の人は、「防空壕といっても、さすがの板谷さんだけあってしっかり造られている。結構手間とお金がかかっている。大きさといいレンガの数といい、普通の人ではとても建てられない代物だ。残せば面白かったろうが、マンションを建てるとなれば、まあ、人口が増えることにもなるのだし、仕方がないな」と話していた。
 関連記事1 関連記事2 関連記事3