市役所ぐるみのパー券販売 市議会調査特別委で露呈



 中松義治小樽市長の後援会の政治資金集めのパーティー券を市役所内で販売し、11部長が政治資金規正法違反に問われた事件を調査する小樽市議会(横田久俊議長)の「政治資金規正法違反問題に関する調査特別委員会」(前田清貴委員長)の初会議が、6月3日(金)13:00から、市役所別館第2委員会室で開かれた。
 同特別委の開催は、市民の注目を集め、約50人の市民が傍聴に訪れ、満席となった。報道各社のテレビカメラが並列する中、約20人の報道陣も審議の行方を見守った。
 出席した市長と各部長は、会議の冒頭、議員(委員)に向かって深く一礼して、この事件を起こし市民の信頼を損なったことを詫びた。
 会議では、市が各部局から聞き取った事件の概要についての資料が配られた。この資料によると、「中松よしはる後援会」事務局長からパー券の販売を依頼された山崎範夫総務部長(現参事)が13名の各部長らに129枚の券を渡し、販売の協力を求めた。各部長は、それぞれの職場で管理職に販売。販売枚数は、総務部20枚、財政部7枚、産業港湾部15枚、生活環境部10枚、医療保険部7枚、福祉部9 枚、保健所2枚、建設部14枚、消防本部7枚、病院局15枚、水道局10枚、教育委員会15枚、議会事務局2枚、監査委員事務局2枚の合計135枚。この販売に関わった総務部長及び当時の部長職10名の行為が、政治資金規正法違反とされたと概要を明らかにした。
 この概要によると、市の各14部局に販売され、パーティ券を購入した職員も明らかにされた(資料1)。また、外部委員による調査委員会についての資料も添付され、委員会は、事件の全容の把握、原因の調査、再発防止の検討を所掌事項とし、4名の委員で構成される。委員は、札幌弁護士会推薦の肘井博行・佐々木潤弁護士、小樽商大推薦の結城洋一郎教授が選ばれた。市民1名の委員を小樽市総連合町会に推薦依頼中としている(資料4)。
 今回の事件は、市役所の各部に及び組織ぐるみで市長選での一候補を応援した実態が浮かび上がった。公務員の中立性と法律を守らなければならないものが、公務員の立場を放棄して、勤務時間中に白昼堂々と庁内でパー券を販売し、金銭のやりとりをする小樽市役所職員のモラルのなさが露呈した。しかも、ほとんどの課長が疑義を唱えず、このパー券販売に協力し、各部長も政治資金規正法を「知らなかった」と口を揃える光景は、まさに小樽市役所の正当性を欠落したことに他ならない。
parkentokubetui.jpg 審議の中でも、この点を追求された。
 「原因はオール与党。認識が甘いのはオール与党だからだ。市民に対し、国保を払えない人には法に照らして厳しい態度だっ た。規律法律を守ることが大事だと市民を厳しくしておいて、自らの時は法を知らなかったということにはならない。選挙管理委員会の隣にある観光振興室や監査委員会、その前の環境部に券は持って行っていた。4年前の指摘があったから、違反との認識があったため、選挙管理委員会には販売していないのではないか」(小貫元委員・共産)
 「恥ずかしい話で認識はなかった。私は部長職にお願いをしたが、次長職は除いていた。4年前の認識はなく、記憶はなかった。そういう意味で選管には行かなかった」(山崎参事)
 「誰一人としてまずいと指摘した人はいなかったのか。市民が怒りの声を上げている。パー券を売買することは市の職務にはない。事務分掌外のことを仕事中に白昼堂々とやっていることに、誰一人、疑義を発さなかったのはどういうことか」(北野義紀委員・共産)
 「一週間の短い間に声をかけた。火曜日に行って金曜日に持ってきた人もいた。疑義を挟んだり議論する時間はなかった。疑義を唱える職員はいなかった」(山崎参事)
 「関与した職員に全てを減給とするのではなく、誰が入っても今日のようなことにならないようにしてもらいたい」(鈴木喜明委員・自民)。
 「そういう観点で対処したい」(中松義治市長)
 「謝罪会見の時に、副市長は笑っていたり、その言動を聞いたりすると憤る部分がある」(秋元智憲委員・公明)
 「この特別委員会が設置されたことは残念だ。市民からは怒りの声がある。違反すると微塵も感じなかったのか」(千葉美幸委員・公明)
 「質問に対して答 えを聞いていたが、皆、優秀な職員なのに、法令順守、地方公務員法、政治資金規正法、公職選挙法を失念したお答えはどうしても理解出来ない」(林下孤芳委員・民主市民)
 「公職選挙法は認識していたが、お恥ずかしながら、政治資金規正法に、パーティーに関する文言があるとは知らなかった。これはもうお詫びを申し上げるしかない」(山崎参事)
 今回のパーティー券だけでなく、他の市議のパーティー券を買ったことはあるのか。市長は実態を把握していないと言っていたが、調査はしたのか。森井・佐藤陣営の券が来ても売買されていたのか」(成田祐樹委員・一新小樽)
 「他のパーティー券については今後調査する」(迫俊哉総務部長)
 「今回のパーティー券について弁解の余地はない。どなたかのチケットでもやったかと言われると難しいが、結果として仲間内だったので、甘い言い訳をするしかない」(山崎参事)などの質疑が行われた。
 結局、市長は、「今、各部長からの話通りで、今後、このようなことがないように庁内で対策をとっていく。公務員は、法を守らなければならない立場にあり、政治資金規正法に違反したことで市民の皆様の信頼を損ねた。今後、このようなことがないようにしたいとお詫びをしたところです」と「二度と繰り返さないようにしたい。市内部でコンプライアンス(法令順守)を直していかなければならない」と答えた。
 傍聴に来ていた市民からは、「市長や各部長には、悪いことをしているという認識がまるでない。我々市民は罰金刑を受ければすぐクビになる。謝って済む問題ではない。あまりにもひどい市役所だ」。「ふざけるなと言いたい。お互い慣れ合いでやっている」。「法律を守る公務員が、白昼堂々と違反し、法律を知らなかったということは、考えられない」と怒り心頭の様子だった。
また、市長や部長が議員(委員)に向かって詫びたことについては、「市民に尻を向けて謝ってもどうしようもない。議員だけに謝れば済むとする慣れ合い体質が露呈している。この調査特別委員会は、委員と理事者側の席を逆にして傍聴席側の市民と向かい合って質疑した方が良い」との指摘もあった。
 調査特別委の初会合で明らかになったのは、小樽市役所の組織を挙げての中松市長への支援であって、公務員の中立性は吹き飛んだ。この中には、役人がゴマスリで自らの保身に走る姿が透けて見える。小樽の政治風土の根深さを感じさせるものだった。検察からは、「悪質な事案」と決めつけられたのに、小樽市役所では、「赤信号みんなで渡れば怖くない」と堂々と法律違反をしていた。このような政治風土が改められない限り、小樽市役所の再生の道筋は見えてこない。
 市職員の政治資金規正法違反について(市民の皆様へ)
 外部委員による調査委員会について
 小樽市職員の政治資金規正法違反事件に関する調査委員会設置要綱(案)
 小樽市機構図(3月31日現在)
 統一地方選における職員の服務規律の確保について