まだ出ぬ「高島おばけ」 4月の観測ゼロ


 4月下旬に入っても気温が上がらない日が続いている。4月に毎年1回は観測される蜃気楼「高島おばけ」が、まだ出現しておらず、蜃気楼ファン は、まだかまだかと待ち焦がれている。
sinkiro.jpg 小樽市沖合いの石狩湾では、毎年4月から8月にかけて10回程度、蜃気楼が観測されている。蜃気楼には、上位蜃気楼と下位蜃気楼の2種類あり、小樽では、全国でも珍しい上位蜃気楼が発生する。
 小樽の蜃気楼は、石狩平野周辺から流れる暖かい南の風と石狩湾の冷たい北風が重なり合って発生し、高島の崖や銭函のタンク群、海上の船などの上方に反転像が見える。
 1846(弘化3)年に、北方探検家の松浦武四郎が、小樽の海上で「蜃気楼」を見たと日誌に記している。当時の人々は、小樽沖の蜃気楼を「高島おばけ」と呼んでいたと記録され、今でも、この呼び名が使われている。
 蜃気楼を研究する小樽市総合博物館の大鐘卓也哉学芸員は、、高島や朝里などに観測カメラを設置し、蜃気楼発生予測の研究を行っている。この結果、昨年は6 回、一昨年は9回観測した。蜃気楼発生期待度の予報が高いと発生確率が高く、予報システムには一定の信頼性があるとしている。
 このシステムによると、今年は、シーズンの4月になっても、発生期待度は全くない状況だ。小樽の蜃気楼は、手稲山口の最高気温が海水よりも10℃以上ある場合に発生するが、気温の上昇が見られず、まだ観測されていない。
 小樽では、高島漁港近くの海岸、旧高島トンネル南側の道路沿いから、銭函海岸、石狩湾新港の蜃気楼を見ることが出来る。朝里駅近くの海岸や朝里海水浴場、 銭函駅近くの海岸、おたるドリームビーチからは、高島岬、石狩湾新港、雄冬岬などの蜃気楼を見渡せる。銭函の海岸からは、蜃気楼になった太陽が海に沈むの を観測出来る可能性があるという。
 北陸地方北東部の富山湾は、日本有数の蜃気楼の名所で、「蜃気楼の見える街」として、蜃気楼のシーズンの4月、5月 は、多くの観光客が訪れるという。大鐘学芸員は、「こんなにマメに記録しているのは道内では小樽だけ。小樽では、春の風物詩となり、江戸時代から記録があ る蜃気楼というのは魅力的だ。面白い自然現象が身近に見える興味深さを、小樽市民をはじめ多くの人に知ってもらいたい」。小樽を、北海道の「蜃気楼の見 える街」としてアピールする。
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 小樽蜃気楼