甦った国内最古の機関車庫 保存修復工事完了


kikansyako3.JPG 国の重要文化財で、小樽市総合博物館(手宮1)に現存する、国内最古の「機関車庫3号」の3年半にわたる保存修復工事が完了し、このほど、明治期の姿のままに甦った。
 「旧手宮機関車庫3号」(建築面積263.6平米)は、1885(明治18)年竣工。フランス積みのレンガ造りで、扇形が特徴的。北海道庁赤レンガ庁舎を手がけた平井晴二郎が設計。室内は、間仕切り壁で東側に1台、西側に2台の計3台分の車両空間に区分されている。
 同車庫が建つ小樽市総合博物館敷地周辺は、北海道の鉄道の発祥の地で、周囲には、機関車庫3号のほか、同1号、転車台、貯水槽、危険品庫、擁壁など、鉄道施設が今でも残っており、2001(平成13)年11月には、日本近代化を物語る鉄道資料「旧手宮鉄道施設」として国の重要文化財に指定された。
 「機関車庫3号」の保存修復工事は、2005(平成17)年度の調査で耐震性能が不十分で老朽化が進んでいると診断されたことから、2006(平成18)年6月から国庫補助事業としてスタートした。工事費は、国1億6,050万円、道8,010万円、市8,040万円の総額3億2,100万円をかけた。
 工事は、「大正期以降の数度にわたる修理時に内外装の形状や仕様を大きく変えているため、大正期以降に整備された内外装材を撤去し、建設当初の姿を残しつつ機関車庫として最も設備が整った明治30年代末の姿に復旧整備し、あわせて構造補強を施すとともに機関車庫としての機能回復を行う」の方針で行われた。
 建物を解体して建築技法・素材などを調査し、腐った木材やレンガの補修作業を行って組み立てる作業が繰り返された。工事には、延べ1,000人を超える職人たちが関わった。
 2006(平成18)年10月には、、レールの下から点検作業用のピット(溝)が見つかり、構造補強工事の設計変更を余儀なくされる事態となり、工期が延長となった。「50年後に技術が進歩した時のために、補強用の鉄筋の柱は取り外せるようになっている」という。
kikansyako1.JPG 正面入り口のアーチを、欠円から元々の半円に、内壁のモルタル塗りを剥がして漆喰塗に、蒸気機関車の煙を排出する煙突3本を復旧、越屋根側面の板張りを本来のガラス窓に戻す作業などが行われ、明治37年頃の姿を甦らせた。関連記事1 関連記事2
 工事中には、車庫の土間下から、1885(明治18)年6月から12月までの間に埋設された水道の「鉄管」が検出された。農商務省北海道事業管理局炭礦鉄道事務所の幌内事業報告にある「機関車ヲ掃除用水ノ水ヲ引ク為鐵管ヲ設置セシモノナリ」の記述と一致するという。鉄管は約8mの長さで、2m50cmずつの3分割に切り取られ、博物館の資料庫に保管されている。
 明治37年頃の姿に甦ったこの「機関車庫3号」は、冬期間は雪囲いをするため、一般には公開されない。
 同館では、2010(平成22)年4月29日から、夏期営業とアイアンホース号の運行開始に合わせて、「機関車庫3号」の再公開を行うことにしている。アイアンホース号をこの車庫から出発させる記念セレモニーや修理工事に係る記念講演も開催の予定。