人間国宝・野村万作さん講演 聴衆から大きな拍手


nomura1.jpg 人間国宝の狂言師・野村万作さん(77)の講演会「伝統文化の継承~狂言を後世に」が、2月27日(金)18:30から、市民センター・マリンホール(色内2)で開催された。
 講演会は、(社)小樽法人会青年部会(鈴木喜明部会長)の主催。北海道でも狂言の舞台に立ったことはあるが、講師として登場することは珍しいことから、多くの市民が来場し、会場は立ち見が出るほどの満員となった。
 ステージの上には、小樽市能舞台(旧岡崎家能舞台)の鏡板を撮影・印刷して作った擬似能舞台が設けられた。この舞台に登壇した野村万作さんは、「親戚が稲穂町に住んでおり、子供の頃は良く銭函の海水浴場で遊んでいた」と小樽との関わりから語り始めた。
 「先ほど、能舞台を拝見してきたが、時間が経っている良さ、年をとると滲み出てくるやわらかさ、暖かさを感じることが出来た。この舞台で演者になると、演技が光る。新しい豪華な建築物では、演者が負けてしまい、映えない。観客も固くなってしまう。
 狂言は笑いを中心とした喜劇で、室町時代に出来た現代劇だと思っている。この当時の話を土台にし、その頃にいた人が出てくる。大名や家来、商人、百姓、泥棒など様々な人が出てくる。時には、悲しい話など喜怒哀楽がある。人間の姿、心を表現している。
 能は、真面目とか、歴史的、音楽的な総合演劇と思われている。これに対し、狂言は軽く笑って云々というのが、これまでの歴史の流れになっている。能の途中にある狂言が休憩時間になってしまっており、こういった流れの中で、祖父や父、私が子供の時は色々な思いを味わった。なんとか、狂言に目を向けてもらえないかと思ってきた。その後、一部で庶民的と言われるようになり、日の目を見ることになった。
nomura2.jpg ”よしもと”が盛んな時代だが、喜劇万々歳で、笑いの質は決して向上していない。そそっかしく笑う、訳も分からないで笑う、誰々のファンだからとちょっとやると笑う、そういう種類の笑いになっている。狂言はいたずらに笑うのではない。
 父の時代は新しいことをやると風当たりが厳しかった。私の時代になると、民謡や神話、シェイクスピアなどを行った。息子になると、陰陽師やハムレットなどで、テレビにも出るようになった。違う流れが体に入ってきている。狂言が流動的になっている」 などと、軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)な語りで会場に笑いを沸かしていた。
 この後、小金の音(ゴールド)と鐘の音(ベル)を聞き間違って主人に怒られる家来の物語「鐘の音」の狂言が披露され、満席の会場から大きな拍手が起こった。
 最後に、小樽の関わりについての質問がなされ、野村万作さんは、「父の姉が札幌におり、母の妹が稲穂町に嫁いだので、札幌の帰りに小樽に来ていた。1つ上のいとこと遊んだり、銭函の海水浴場で遊んだりした。海陽亭で叔父が狂言を教えていたこともあった」。また、「旧岡崎家能舞台の前に観客席が設営出来たあかつきには先生に来ていただきたい」との要望に対し、「元気でいなければいけませんね。早く作って下さいね」 と笑顔で答えていた。
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