蒸気機関の歴史を紹介 総合博物館講座


joki1.jpg 小樽市総合博物館(手宮1)の学芸員リレー講座「蒸気機関の歴史と科学」が、1月10日(土)13:30、同館2階研修室で行われた。
 今回は、東山一成学芸員が、実験とともに蒸気機関のはじまりから確立までを紹介。集まった市民約20人が、蒸気機関の発明家や歴史について熱心に耳を傾けた。
 蒸気機関は、蒸気の圧力を機械的エネルギーに変換する原動機の一種。ボイラなど機関外部で発生させた蒸気を用いる。レシプロ機関型とタービング型がある。「蒸気機関と聞くと過去の遺物と思われがちだが、そんなことはない。英語だとスチームエンジンで、現在の火力・原子力もタービング型で、蒸気とは切っても切り離せないもの」(東山学芸員)と語った。
 「約2000年も前の紀元前2世紀から紀元後3世紀の間で、古代エジプトの科学者・数学者のヘロンが、蒸気タービンを発明した」と歴史を説明。「資料が残っている人類最初の蒸気エネルギーを使用した装置」として、空き缶を利用したヘロンの蒸気タービンの実験を披露した。
joki2.jpg イギリスの発明家・トーマス・ニューコメンは、鉱山の水を汲み上げることを目的とした蒸気機関を発明し、実用化されることになった。「ようやく実用化され、馬50頭分の力となり、費用も6分の1となった。しかし、その分掘った炭鉱を使うことになり、昔は大変だった。それに、トーマス・セイヴァリという発明家が特許を持っていたため、75機しか製造されず、商業的に大きな成功にはならなかった」と解説。
 この後、スコットランドのエンジニア・ジェームズ・ワットが、ニューコメンの蒸気機関を改良し、資本家と提携して事業家に乗り出し、産業用の動力源を次々に発明したと紹介。自動車のオートマチックトランスミッションは、ジェームズ・ワットが発明した遊星歯車機構からなり、サスペンションの一部に平行運動機構が使われていると画像などを用いて説明すると、参加した市民の中にはメモを取る人などが見られた。
 「ワットの功績を讃え、英国学術協会が決めた仕事率や電力をあわらす単位をワットとした。産業動力機関だけではなく、大量生産型の社会へと大きな影響を与えた。しかし、蒸気機関車の動力には、直接利用されなかった。発明した蒸気機関は大きすぎて使えなかった」とまとめた。
 鉄道用の蒸気機関は、この後に発明される高圧蒸気機関(トレビシック)からなっているという。