「どこから来たのか?カマキリの世界」 市博物館ミニ企画展


kamakiri1.JPG 本来、道央圏では生息しないはずのカマキリが、昨年から今年にかけて、小樽や余市、札幌で相次いで発見されている。これを受けて、市総合博物館・運河館(色内2)では、11月1日(土)~1月18日(日)、ミニ企画展「どこから来たのか?―道央のカマキリとカマキリの世界」を開催する。
 昨年11月、同館職員が、潮見台でオオカマキリの死骸を発見。今年9月には、余市黒川町でオオカマキリを捕獲。9月末に、港町でチョウセンカマキリが捕獲され、同館に持ち込まれた。
 山本亜生学芸員によると、これまで北海道で発見されたカマキリは、ほとんどがオオカマキリという。「港町で捕獲されたチョウセンカマキリは、北海道での捕獲例はきわめて少なく、非常に貴重な発見。もしかしたら北海道で初めてのことかもしれません」という。
 オオカマキリは、渡島半島が自生の北限とされている。後ろばねが黒紫色、鎌のようになっている両前脚の付け根が白っぽい。
 チョウセンカマキリは、オオカマキリに似たカマキリだが、寒さに弱く暖地にすむ昆虫で、岩手県辺りが北限という。大部分が透明で、前足は朱色を帯びている。
 企画展では、小樽や余市で捕獲されたカマキリや、世界の珍しいカマキリの標本を約50点展示し、カマキリ出現の謎に迫る。
kamakiri2.JPG 「昔も、カマキリを見たとかの目撃情報はあったが、昨年・今年にかけて現物が発見されている。人為的に道央圏に入ってきたカマキリが、定着しつつあるとも言われている」と話している。
 ミニ企画展「どこから来たのか?―道央のカマキリとカマキリの世界」は、11月1日(土)~1月18日(日)、市総合博物館・運河館第二展示室。入館料:一般400円、高校生・70歳以上の市内在住者200円、中学生以下無料。
 また、12月7日(日)13:30~14:00、山本学芸員によるギャラリートーク「小樽近郊のカマキリ事情」も展示会場で行われる。
 10月27日(月)配信の小樽市総合博物館メールマガジン第110号には、カマキリ続報の詳細が記述されており、参考になる。
☆小樽の森から海から34―キノコ展とカマキリ続報 (小樽市総合博物館メールマガジン第110号より)
 毎年恒例のキノコ展が終わり、夏のフィールドのシーズンは一段落という感じです。お好きな方はご存じかと思いますが、今年はキノコが凶作の年で、キノコ展でも事前のキノコ集めにとても苦労しました。種類は目標の100種類になんとか届くことができましたが、量はとても少なく、いつもたくさん採れる普通の種類が少なかったのが印象的でした。
 キノコが少なかった原因はいろいろとあると思いますが、やはり夏から初秋にかけて雨が少なかったことが大きかったと思われます。一時は森の中の乾燥がひどく、キノコだけでなく、昆虫などの動植物への影響も少なくないようでした。
 毎年キノコ展で採集したキノコの中から、いままで食べたことのないキノコを食べてみるのが個人的な楽しみなのですが、今年は「ニカワウロコタケ」というキノコに挑戦してみました。このキノコはハルニレやイタヤカエデの倒木などに生えるキノコで、全体がコンニャクのようなゼラチン質で出来ています。見た目はとても食べられるようには見えないのですが、湯がいて薄切りにし、ワサビ醤油をつけて刺身のように食べるとおいしいそうです。新鮮なうちにひとかたまりをもらって試してみましたが、まさに刺身コンニャクそのものの味で、くせが無く、なかなかおいしかったです。黒蜜をかけたりフルーツの缶詰と合わせてもおいしいそうなので、また今度試してみたいと思います。
 9月頃から話題になっている小樽や余市、札幌のカマキリですが、その後もいろいろな情報が当館に寄せられています。9月末には、市内港町で捕獲されたチョウセンカマキリが持ち込まれました。これまで北海道で見つかっているカマキリはほとんどがオオカマキリという種類で、チョウセンカマキリの捕獲は、もしかしたら北海道で初めてのことかもしれません。オオカマキリは渡島半島が自生の北限とされていますが、チョウセンカマキリはより暖地にすむ昆虫で、岩手県辺りが北限だとされています。
 チョウセンカマキリは、オオカマキリにたいへんよく似たカマキリです。名前の通り、オオカマキリのほうがやや大きいですが、その差はほとんど変わらないと言って差し支えないくらいわずかなものです。チョウセンカマキリの大きな個体は、小さなオオカマキリよりもはるかに大きい場合があります。両者を見分ける分かりやすい区別点は後ばねの色で、オオカマキリが黒紫色を帯びるのに対し、チョウセンカマキリは大部分が透明です。また、両前脚(鎌のようになっている脚)の付け根が、オオカマキリは白っぽいのに対し、チョウセンカマキリは朱色を帯びることでも見分けられます。しかし、後ばねははねを広げないと見えませんし、脚の付け根の模様も、カマキリの体を裏返さないと確認することができません。両者の区別は見慣れないと難しいものです。もしかしたら、これまでに報告されているオオカマキリの目撃情報には、チョウセンカマキリの情報が混在しているのかもしれません。
 チョウセンカマキリは、オオカマキリよりもさらに寒さに弱い昆虫ですから、自分の力で分布を伸ばしてきたとはやはり考え辛いと思います。捕獲された場所が小樽港の敷地内だということを考えても、何かの荷物に紛れて運ばれてきたと考えるのが自然でしょう。捕獲された個体以外にも目撃情報があるようですので、おそらく卵の状態で運ばれてきて、兄弟のうち何個体かが成虫になっているのだろうと思います。運河館からすぐの場所なので、今後も注意して動向を見守りたいと考えています。
 11月1日から「道央のカマキリとカマキリの世界」というミニ企画展を開催することになりました。小樽、余市で捕獲されたカマキリの標本をはじめ、当館所蔵の外国のカマキリなどカマキリに関する様々な資料を展示します。道央圏のカマキリ事情をご紹介するだけでなく、カマキリという生き物の魅力も楽しんでいただける展示にしたいと考えています。是非、お越し下さい。
(学芸員 山本亜生)
 小樽市総合博物館HP