わずか2ページ半の提言 自民党小樽支部の市立病院改革


jiminteigen.JPG 自由民主党小樽支部(駒田久人支部長)は、9月5日(金)15:00、山田勝麿市長に、「市立病院改革への提言」なるA4・5枚の文書を手渡した。
 この提言は、同支部の政務調査会(成田晃司会長)が、市内の公的病院などを訪れて、各院長から意見を聞き、約50時間以上かけて作成したものという。
 提言書は4章からなり、表紙と目次を除くと実質的にはわずか2ページ半となっている。
 「はじめに」では、「地域の医療機関と相互に役割を分担する地域完結型医療を小樽市は主導的に推し進めるべきと考えます」。
 「市立病院の現状について」は、「山田市長の公約である新病院建設計画から9年の歳月が流れた」とし、「病院会計は、平成4年度から平成19年度の16年間で、単年度の収支に1度も黒字を見ることはなく、地方交付税措置や、一般会計からの負担金によって収支を保ってきたが、しかし今後はこの様なスキームを続けることは困難と考える」。
 「市立病院改革への3つの提言」での経営効率化では「人件費比率を50%未満に」、再編ネットワーク化では「再編ネットワーク化協議会を継続、常設化する」、経営形態の見直しでは「地方公営企業法の全部適用の採用を求める」とした。
 「おわりに」では、「市立病院が抱えている諸問題は、単に不採算部門を併せ持つ自治体病院の避けられない状況なのか、経営努力を放棄した医療行政の結果なのかは今ここであえて検証いたしません」とし、「改革の実現は老朽化した現病院にかわる新病院の早期建設のために必要不可欠であります」と結んでいる。「市立病院改革への提言」 
 この提言を受けた山田市長は、「現在、病院改革プランの策定を進めている。50時間も議論され、具体的なものを示してもらい、今後、相談しながら取り組んでいく。病院再編と口にしているが、口でいうほど簡単ではなく、各病院もそれぞれの理念を持って経営しており、公的病院は財源がないが、公立病院は財源があると言われる。おまけに医師不足。どなたか、親戚で医者がいたら紹介して下さい。医者がなければ金が入らない」と述べた。
 横田久俊幹事長は、「今後、各項目ごとに掘り下げて、本会議や委員会で質問や要望をして、改革プラン策定のお手伝いをしながら早く病院を建て直したい」と話した。
 今回の自民党小樽支部の提言は、これまで市長と一体となって進めてきた築港地区での豪華病院建設計画と、約6,000万円の基本設計契約を認めたのに中断に追い込まれた与党の責任についてなどについては、何も触れられていない。新病院、新病院と言っていたのが、いつの間にか、市長も自民党も、総務省の強い姿勢に押され、病院改革、病院改革へと口裏を合わせている。
 基本設計契約の中断・解約料2,581万円の支払いについては、住民監査請求が起こされている。請求人の松浦光紀さんは、新病院建設の中断では、「ほどんどの議員の中で、問題の話し合いがない。本当に市議会が機能しているのか疑問」と指摘している。
 経営形態の見直しでは、地方公営企業法の全部適用を提言しており、「実施して十分な効果がない場合は、地方独立行政法人の移行を求める」と、二度手間での移行を求めている。
 市長は、これまでの発言で、全部適用に固執している。与党自民党が、この全適に乗り、市長にヨイショした格好だ。しかし、総務省では、非公務員型の独立行政法人への移行を求めている。
 神奈川県の病院事業庁では、すでに全部適用を採用しているが、「現在、地方公営企業法の全部適用という運営形態においては制度的、実態的な制約があり、新たな政策課題に適切に対応していくことが困難である」として、「できる限り早期に県立6病院を一般地方独立行政法人化することが必要である」との方針で準備に入っている。
 総務省の公立病院改革懇談会座長の長隆氏は、各地での事例をもとに、「非公務員型の地方独立法人への移行がベストの選択」と述べている。
 それにもかかわず、小樽市と与党自民党小樽支部は、相変らずの能天気ぶりを発揮している。全適の結果を見てからの2段階での移行ではなく、直ちに地方独立行政法人化を提言すべきであろう。
 また、病院改革は、市内の医療機関との連携が絶対条件としているが、具体的にどのような方策で連携するのかなどは、何も触れられていない。
 この提言に対しては、すでに市役所内部からも、「市民の目を意識しただけの内容の薄い単なるパフォーマンス」という声が起こっている。
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